ようかんのちょっとひとくち

 地震、発災、人災
 驚きと悲しみが怒りに変わる
 国民を不安にさせないようにとの優しい配慮は裏目に出なかっただろうか


 毎年、夏になったら一度だけ鰻を食べることを楽しみにしてきた私だけれど、そんなちっぽけな望みはもう、どうでもよくなった。蝉の声が聞こえない不穏な夏。「節電の夏」のはじまりである。ついこの間まで、セールス電話で断っても断ってもオール電化を勧められ、ありあまる供給量を誇っていたかに見えたのが一転、国をあげての節電に協力しなければならなくなった。いつもながらの貧的生活、綱渡りの毎日をほそぼそと暮らすことでなんとか成り立っている私の生活にもある程度の電気は必要で、どこをどうすれば今以上の節電ができるのかわからないけれど、求められる以上はやってみようと思う。てはじめに、節電の夏を待たずに壊れてくれた湯沸しポットを褒めてあげたい。電気の流れにコードあり。手持ちの家電を減らし、コードが付いているものを使うのを控えること、これが節電への近道なのだ。

 国民への節電対策としてやり玉に挙げられているのはエアコンで、設定温度を二十八度にして扇風機との併用をすすめられている。窓から容赦なく入り込む直射日光を遮り、部屋の気温の上昇を防ぐために、窓の外に「緑のカーテン」と称される、ゴーヤや朝顔などのつる性植物を育てたり、外の気温を下げるための道路への打ち水も効果があるそうで、これらはみな、昔ながらの生活の知恵の活用である。巷に溢れる「ひんやり」グッズ。電球を買い換えても節電に繋がるらしく、この国の節電関係の経済は淀みなく流れているようだけれど、今の私は流れに乗ることができず、グッズの購入にまで手がまわらない。節電に協力するだけで精一杯だ。昔の知恵を拝借したくても窓の外は道路が走り、苗を植えるためのプランターや土さえも買わなければならない境遇とあって、なかなか実行できないでいる。こういう年に限ってゴーヤを一鉢も作っていない私が、この中で出来ることは道路への打ち水しかない。打ち水の効果なら前の家で実証済みだ。お風呂の残り湯をバケツで裏庭に撒いた夏の日、開け放った窓を抜けるひんやりとした風。あの裏庭は私に、お風呂の残り湯さえ無駄にさせなかった。今の家でもお風呂の残り湯はたっぷりある。洗濯と掃除に使っても余る。これなら私にもできる、この夏はお風呂の残り湯を盛大に撒いてやろうと思っていたのに、なんと、舗装された道路への打ち水は逆効果らしい。試しに家の前の道路にザバァッと撒いてみて打ちのめされた。撒いたときに吹いていた風が通り抜けるときは確かに涼しい。でも、風が去ったあとは湿気を含んだ重い空気が足元にまとわりつき、風情も何もなかったのである。舗装されて土を覆われ、砂ぼこりを巻き上げなくなった道路に水を撒く必要がなくなったのだ。文明の発達は新しい世の中をつくり、時にむずかしい世の中をつくる。湯船の栓を抜いた貧者はそっとバケツを置くのだった。

 我が家における節電の対象となる家電も、やはりエアコンが一番にあげられる。こんなことを書くと「貧者のくせにエアコンなんて」と罵られそうだけど、盛夏ともなれば体温を越す勢いの最高気温を誇る地域に住んでいるのでエアコン無しの夏は耐え難い。当然、夏ともなると我が家電の消費電力のトップに躍り出て、貧的生活に輪をかけるのが分かっているけど、どう考えても今以上の節電は難しく思える。救いは、設定温度二十八度の部屋でも充分に涼しさを感じることができる点で、エアコンと併用して扇風機を回すような電気の無駄遣いをしていないということぐらいだろうか。エアコンが消費する電力の穴埋めをしてくれそうな家電に、引越しを機に全自動から二層式へと買い換えた洗濯機がある。電力を節約するため、洗う時間とすすぎの時間をそれぞれ一分間ずつ短かくしてみることにした。脱水も三十秒ほど短くすることにした。こんな微調整ができるのも二層式洗濯機ならではのこと。洗濯の時間を機械に任せるのではなく、自分で決められるのが嬉しい。毎日ではないけれどアイロンも使っているので、洗濯物を干すときは皺を伸ばすことを心がけ、アイロンをかける時間を短くする。ハンカチはアイロンをかけなくて済むように窓ガラスに貼って乾かしてみよう。髪をショートカットにしたその日から脱ドライヤー。あとは炊飯器の出番を少なくするための主食の工夫で、季節がら冷やしうどんも捨てがたいけど頂き物があることだし、素麺の日が多くなると思う。素麺なら茹で時間が短いので省エネにもなり、年中あたまを悩ませているガス代が跳ね上がる怖れもない。これで、どれだけの節電になるのかわからないけど、とりあえずやってみる。一貧者の微々たる節電が少しでも役に立つことを願って。
よ

招きます 筆者紹介:ようかん
日本生まれ、国内在住。
図書館で出会った「貧乏神髄」に惹かれ、会長のサイト見たさにパソコンを覚え今に至る。
猫好きだが借家のため飼う事が出来ず、
二匹の招き猫と暮らしている。

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