ようかんのちょっとひとくち

[長芋を蒸す]

 冬になると、リンゴと長芋を交互に送ってくださる方がいる。この冬に頂いたのは長芋だった。生で食べても、煮ても焼いても美味しい長芋。蒸して食べる長芋も体が温まり、寒い日には何よりのご馳走になる。地球温暖化もなんのその、いつになく多い雪の日にストーブを点火し、長芋の皮を剥く。皮を剥いて水に浸し、アクをぬいた長芋をすりおろす。大きめに切った絹ごし豆腐を器に入れ、すりおろした長芋を豆腐が隠れるくらいにたっぷりとかける。鍋に器を入れ、器の高さ三分の一くらいの水を入れる。鍋に蓋をしてストーブに乗せ、お湯が沸き、とろとろだった長芋が固まるまでコトコトと蒸す。冷蔵庫に作り置きしてある、小さく切った昆布と薄切りにした生姜を醤油に漬け込んだ「昆布生姜醤油」を出汁で薄めて温め、水溶き片栗粉でとろみをつけた「あん」をつくる。豆腐と長芋が蒸せたら器にたまった水分を捨てる。そこに、熱々の「あん」をかけるのだけど、それだけではちょっとものたりない。柚子胡椒とか、冷凍保存してある柚子の皮が残っていれば最高だけど、ないときにはネギをちらし、しょう油に漬けてある生姜の千切りをのせる。わさびを利かせても美味しいし、鶏そぼろ入りのあんも良く合う。蒸したての長芋はもっちり、あつあつで、ひとくち食べるたびに体がほんわか温まる、幸せな一品となるのでした。


[餅を焼く]

 同じ部屋にいるだけでいい。お湯を沸かすのは朝飯前、煮物料理もお得意な貴方任せのストーブ料理も、焼き物をする時はつきっきりになる。パンや魚肉ソーセージなど、アルミホイルにくっつかないものはまだ焼きやすい。アルミホイルの包みから、こうばしい香りがしてきたら上下を返し、焦げ付かないようにストーブの天板の端っこに置いたりして、微妙な温度調整をすれば中までしっかり火が通る。ただし、膨らむと転がる可能性が高い細身の「切れはし餅」を、真ん中が焼け落ち、穴が開いた焼き網で焼くときは、ストーブの熱を顔面に受けての真剣勝負となります。網の破れからストーブに落ちた餅が焦げ付いて煙が立たないように。膨らんだばかりの柔らかな餅風船がストーブの天板にへばりつき、その大半を失うことがないように、見張らなくてはならない。餅を網に乗せてから箸を持ったままでスタンバイ。餅に薄っすらと色がつき、表面が浮いた感じになったら膨らみ開始の合図。箸でつついて、餅風船ができる場所を促しても、餅は気まぐれ。なかなかこちらの思うように餅風船を作ってくれない。箸でつついても音沙汰無し、まだ早かった?と、裏返したとたんに下から膨れたり、角から小さな餅風船を作るのもいる。熱に火照る頬、見つめる餅。動かし続ける箸。続々と焼きあがる複数の餅を、別々に用意しておいた、黄な粉・大根おろし・しょう油の小皿に投げ入れ、冷めやらぬ頬のまま餅を焼いていた箸を握り直し、どれから食べようかと迷うひとときが楽しい、我が家における冬のひとこまなのです。


[八朔のジャム]

 やった!皮も食べられる。思わぬところから新鮮な八朔を貰い、無農薬と聞いて落ち着いていられなくなった。果物は生で食べるのが好きだけど、生食した八朔の皮は思いのほか不味かった。一瞬で消える甘味。舌に残るピリピリ感に負けました。ここは素直にマーマレードを作ろうと砂糖を買いに走る。マーマレードを作るには皮の下処理に何度もお湯を沸かさなければならないけど、こんなときこそストーブが本領発揮するときだ。凍える台所と違い、ストーブの周りは春のように暖まっている。ぬくぬくとストーブの前に立ち、白いところを適当に切り取った四個分の八朔の皮を水から茹でる。沸騰したらお湯を捨てて皮を水洗い。また水から茹でるのを三回くりかえす。三回目に洗った皮を絞ったら薄切りにして、薄皮の袋を除いてほぐしておいた三個分の「実」と一緒に砂糖で煮る。四個分の皮と三個分の実、買ってきた砂糖を五百グラムとちょっと使っただけでジャムの空き瓶三個分のマーマレードができた。これでしばらくの間、パンの朝食が味のあるものになる。冷蔵庫を開けたついでにジャムの瓶を眺め、これだけあればチキンのマーマレード煮も作ることができると思うと、それだけで、贅沢しているかのようにワクワクする貧者なのでした。
よ

招きます 筆者紹介:ようかん
日本生まれ、国内在住。
図書館で出会った「貧乏神髄」に惹かれ、会長のサイト見たさにパソコンを覚え今に至る。
猫好きだが借家のため飼う事が出来ず、
二匹の招き猫と暮らしている。

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ようかんのちょっとひとくち 耐乏PressJapan.
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