ようかんのちょっとひとくち

[通帳の空欄眺めて空想す我が欲望の多きに驚く]

 同じ国に住んでいながら、とっくの昔に支払われた地域とようやく「お知らせ」のみが届いた地域がある不思議。貰わぬうちからアレコレ考えてしまう定額給付金のこと。腕がいいと評判の美容室に行ってみようか。一足のウォーキングシューズに全ての金額を使い果たしてみようか。好きなものをお腹いっぱい食べたとしても痛まない自分の懐。宝くじのように大きな夢が買えなくても、忘れていた贅沢を味わうには申し分のない金額に胸を高鳴らせている。ものを買うときに、三度考えると本当に必要なものなのかが分かる、というけれど「忘れていた贅沢」にまで必要かそうでないかを考えていたら脳がすり減ってしまう。一万二千円という金額に忙しく動きはじめた脳は、忘れていたものを次から次へと思い起こし、何かをひとつ選ぶことさえ難しいのだった。届いた「お知らせ」は絵に描いた餅のようで、空っぽのままの通帳を眺めても一向にお腹が膨れてこないけど、必ず叶う小さな夢を見続けている。


[新たなる敵加わりしスーパーの手に入れがたき特売の品]

 今日も買えなかった、お一人様ひとつかぎりの超目玉商品。戦いむなしく逃した洗濯用洗剤。おおよその敗因は見当がついている。長年の労苦を共にした愛すべき伴侶を伴ない・・否、伴侶に伴なわれながらスーパーの特売品ゲットに借り出される年金族のオジサマたちだ。春を境にやけに増えた彼らは顔の艶もよく、見るからに元気そう。長い年月を家族のために費やしたそのパワーは計り知れないものがあり、スーパーでの活躍はもてあます体力を爆発させるかのようだ。満員電車で鍛えた身体は人ごみをものともせず、目当ての品にたどり着く。ふたつの特売品を一度に取り、ひとつは自分のレジカゴ、もうひとつは遠くで待っている伴侶に手渡し。別々のレジを通り抜けるその姿は「お見事!」というしかない。就職して一年も経たないうちに満員電車に疲れ果て、職を変えた経験がある貧者に到底立ち向かえるはずがなく、商品が無くなったワゴンを見届けたのち、空っぽのレジかごをそっと元に戻し、家に帰るしかないのであった。


[水を得た魚のようにいきいきと育つクレソン初夏のベランダ]

 冬の氷に滑り、立ったまま一回転。転びそうになったところを柵にしがみついて事なきを得たベランダに、初夏の風が通り抜ける。足元に並ぶ植木鉢。無事に冬を越したパセリも色あざやかに新芽を増やしている。新しく並べたチャービル、スープセロリ、大葉、イタリア野菜のマスタードという葉っぱも元気に育っている。プチトマトは花が咲き始め、これからが楽しみだ。失敗を繰り返し、栽培するのを諦めかけたクレソンもベランダに越してから見違えるように元気になり、どの茎がはじめの一本か分からないくらいに増えた。木箱いっぱいに葉を出し、もつれたのをほどいて摘み、晩ごはんに使う。酢であえたスライスオニオンをギュッと絞り、お皿に平たく盛ったのにかつお節をかける。その上にクレソンをふんわりと積み、横にチャービルの花を添えれば「スライ酢オニオン・初夏の風とともに」の完成だ。他のおかずは、甘辛い新じゃがいもの煮物と、ししゃもが二匹。麦入りご飯が炊きあがれば、優雅な夕餉のはじまり、はじまり。
よ

招きます 筆者紹介:ようかん
日本生まれ、国内在住。
図書館で出会った「貧乏神髄」に惹かれ、会長のサイト見たさにパソコンを覚え今に至る。
猫好きだが借家のため飼う事が出来ず、
二匹の招き猫と暮らしている。

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ようかんのちょっとひとくち 耐乏PressJapan.
発行:全日本貧乏協議会
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