ようかんのちょっとひとくち

 張り紙を見てドキンと胸を鳴らす。近所でただ一店だけレジ袋を無料で提供してくれていたスーパーで、レジ袋の有料化を告げる張り紙を見つけてしまった。この店だけは私の味方だと思い、通いつめていただけに親友に裏切られたような気になった。無料から有料への道のりはあっけなく、商品として扱われるようになったレジ袋の値段も、こちらの懐になんの相談もなく決められていた。一枚五円、二枚求めると袋だけで十円の出費。この微妙な値段が私の心に揺さぶりをかける。揺れ動く心をなだめるように二種類の貰い物エコバッグを試してみた。一枚目はどこかの粗品だったという、レジ袋に毛が生えたようなナイロン製のエコバッグ。これはその薄さゆえ卵のパックに負けたあげく、自転車の前かごから取り出すときにひっかかり、いとも簡単に穴が開いた。穴が開いたのに透明ではないためゴミ袋として使えず、ただのゴミへと成り下がり、私の心を大きく揺さぶった。布製のエコバッグはその厚さゆえ、どんなに頑張ってもコンパクトにたためない。かといって、そのまま持ち歩いて万引き袋と疑われるのも嫌なので、無理やり鞄の中に押し込んで持っていく。卵のパックに勝ち自転車の前かごにも負けなかった布袋に、久しぶりに買った鶏のムネ肉から染み出したドリップで大きな染みができた。汚れて臭いまでついた袋を再び鞄の中に押し込む気にならない。ドリップが乾かないうちにと、急いで袋を洗うことにした。ナイロンよりも丈夫で長持ちしそうな布袋だけど、肉のドリップが染みるたびに洗うことはエコ的に見てどうなのだろうか。

 エコバッグを使ってゴミになるレジ袋の減量を頑張ったとしても、うちからゴミが出る限り、私にはゴミ袋が必要になる。私だけじゃない、ほとんどの人がものを捨てるときにはゴミ袋を使ってると思う。だとすれば、エコバッグを使うことが、かえって無駄になりはしないだろうか。家庭内のゴミを減らしたいがためにレジ袋を有料化しておきながら、エコバッグが売れ筋と見れば大量生産し、お洒落なエコバッグを選び放題に並べる。それが本当にエコなのだろうか。エコバッグがファッション化して購買意欲をそそられればそそられるほど、本末転倒になりはしないだろうか。今、多くの店で並んでいるエコバッグの行き先を考えると恐ろしくさえある。うちから一番遠い大きなスーパーでは、エコバッグならぬエコカゴのような、レジカゴそっくりなものまで売り始め、商人の逞しさを思い知らされた。エコだ、何だと叫ぶより、要はレジ袋を使い捨てなければいいだけだと思う。一枚五円で買った袋を、レジ袋からゴミ袋へと直結せず、間にエコ期間を設けて「エコ袋」としてヨレヨレになるまで使えばいい。計算されたあの形。軽くてかさ張らず、水にも重さにも強くゴミ袋にぴったりのレジ袋を買い物のたびに求めることをやめ、買い求めたものを破れるまで大切に扱うなら、少なくともエコバッグというゴミ袋にもならないゴミが出ないはずだし、エコバッグを洗う手間も省ける。

 暮らしの中で、使い捨てできるものほど便利なものはなく、安く、安易に手に入れば入るものほど使い捨てる可能性が高い。最近、頻繁に起こるようになったゲリラ雷雨。その襲来時に飛ぶような売れ行きを見せたという、ビニル傘もまた使い捨ての一途を辿っている。昔とは比べ物にならないくらいの、お手軽すぎる価格。一本百円とか三百円の出費は、貧者ではない一般市民にとって痛くも痒くもないらしい。ゴミの減量を筆頭に、いろいろな理由から地球温暖化への原因として槍玉に挙げられたレジ袋。その使用量を減らすために有料化となり、代わりを勤めるべく急浮上したエコバッグ。温暖化の影響で街に溢れる雨とビニル傘。貰い物のナイロンエコバッグは簡単にゴミになり、ビニル傘の行く先は粗大ゴミ。ゴミを捨てるということは、ゴミになる前の「物」を製造するときの原料も手間も何もかも一緒に捨てているということ。ゴミの減量と、二酸化炭素排出量の削減、地球温暖化を防ぐために有料化され、商品となったレジ袋の使用量はどれだけ減るのか。商品化されたレジ袋を盾にして流行りもの扱いのエコバッグや、使い捨てられる運命を背負いつつ作られる安いビニル傘がゴミとして出される量はどれくらいになるのか。そこに二酸化炭素の排出はないのか。どこかで断ち切らなくてはならない、この堂々巡りの行き先は、いったい何処にたどり着くのだろう。

 スーパーで求めたレジ袋を破れるまで大切に使い、最後にゴミ袋としてその役目を終わらせ、昔のように少々無骨で値が張っても長持ちする丈夫な傘を持ち歩いていれば、私も、地球に優しい人へと近づけるだろうか。できることなら、地球に優しいことは財布にも優しいものであってほしい。貧者の敵は安物買いの銭失いだ。「安物買いの銭失い」が乏しい原料を無駄使いし、空気を汚し、ゴミを増やしていることに気がついたなら、大量消費生活から抜け出せる。大量消費生活から抜け出すためなら、貧者といえども一枚五円のレジ袋を買うことなど惜しくない。一枚五円というレジ袋を安物で終わらせるのか、価値あるものにするのかは全て、エコバッグを持ち歩かないことに決めた私の腕にかかっている。
よ

招きます 筆者紹介:ようかん
日本生まれ、国内在住。
図書館で出会った「貧乏神髄」に惹かれ、会長のサイト見たさにパソコンを覚え今に至る。
猫好きだが借家のため飼う事が出来ず、
二匹の招き猫と暮らしている。

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