ようかんのちょっとひとくち

[一本のひげさえ恋し君となら貧の暮らしも豊かに見ゆる]

 食材を買いに行く足取りが重く感じられるこの頃。香り付けに買っていたバターもすっかり影を潜め、買おうにも品物が並んでいない。値上げ騒動で人気が急上昇したとみられる見切り品コーナーは、いつ覗いても品薄ですっかり魅力がなくなってしまった。ほとんどの食材が値上げ前の値段から一割から二割程度値上げされてるように思えるのは、貧者の僻みだろうか。目玉商品、特売のはずのほうれん草の量が減ったように見えるのは目の錯覚だろうか。特売の野菜を目当てに買い物に来たのに期待はずれのもどかしさ。こんなもどかしさのせいなのか、最近やけに「もやし」が目に付くようになった。超特価で十八円。特売品でなくても一袋三十円前後で買える手軽さ。何はなくともレジカゴにまず一袋。もやしのお味噌汁、もやしと卵の炒め物、もやしだけ焼きそば、中華和えにお浸し、スープにサラダ、鍋の友。自己主張しすぎない控えめな味わいは、料理の幅を広げ、量を増やしてくれる。野菜の仲間内では一番華がなく、地味な存在なのかもしれない。けれど、ああ、もやし。もやしは今、私の中で人気急上昇中の野菜になりつつある。食感を損ねるからと若い頃に取り除いていた、もやしのひげ根。今ではその一本のひげ根さえ恋しく、否、美味しく食べられるのだ。


[三鉢のパセリの育ちに食託しトマトの苗にも望みをかける]

 何度挑戦してもうまくいかないクレソンの栽培。猫のマーキングの集中攻撃を受け、葉が細いまま色が変わっていたニラ。暑いくらいの日差しの中で、去年買ったパセリの苗だけが大きく育っている。あの独特の強い香りが嫌だ、と敬遠する人も多いけれど私は好き。好きでなければ裏庭で三株も育てていない。鉢植えなので、フライ物の付け合せやスープ、サラダの彩りになればいいや、と思っていたのに三株とも見事に育ってくれ、たまに天ぷらにして一度に大量に食べないと追いつかないくらいに伸びてくる。パセリの他に何か食べられるものを育てたいと、カルシウムを摂る予定だった「小松菜」の種を買いに行ったホームセンターで目に留まったトマトの苗。苗には蕾もついている。苗に付けてある鈴生りのプチトマトの写真に収穫時の嬉しさを重ね見る私。蕾がついてるなんて収穫が約束されたようなものじゃないの。暖かくなると虫が付きやすい小松菜より育てやすそうで、小松菜の種を買うのを止めトマトの苗を選んでしまった。赤色と黄色、二種類のプチトマト。裏庭には蜂もくるし、花が咲けばこっちのもんだと今から楽しみにしている。願わくば、蕾のまま枯れるなんてことがありませんように。


[減る体重喜ぶ肝臓頭冴え身をもって知る酒の重さよ]

 買い置きのお酒が切れた。お酒が切れたからといって暴れるほどの体力もなく、この値上げラッシュによって新たにお酒を買う財力もない。トマトの苗を買ってしまったし、これを機にお酒を断つことにした。お酒を断つ、といっても気負って「断酒」と書いた紙を壁に貼ったりしない。ただ飲まないだけである。飲まなくなって三日目、やけに身が軽い。試しに体重を量ってみると約一キロの減量。普段の食事は何も変わりなく、むしろ間食が増えたくらいなのに驚きのスピードで減る体重。目覚めもよく、頭がすっきりと冴えている。いつも鈍い動きしか示さない脳も心なし動きがいいようだ。自ずと機嫌も良くなり、散歩の足取りも軽い。足取りが軽く、身も軽くなり、酒の重さに気がつく私。自分で買うのはカップ酒、でも戴き物があれば浴びるように飲んだ日々。夜の深酒イコール肥満だったのか。全ては日、一日と減る体重が物語っている。自分で気づかないうちにアルコール性の脂肪肝街道をひたすらに走り続けていたのかもしれない。値上げラッシュに気づかされたわが身の危険。物言わぬ臓器の代表である肝の臓も静かに喜んでいることだろう。私の断酒はいつまでもつか分からないけど、とりあえず自分から買うことはないと思う。それにしても、以前知人に戴いた活性にごり酒はことのほか美味しかった。できることならあれをもう一度だけ味わいたい。
よ

招きます 筆者紹介:ようかん
日本生まれ、国内在住。
図書館で出会った「貧乏神髄」に惹かれ、会長のサイト見たさにパソコンを覚え今に至る。
猫好きだが借家のため飼う事が出来ず、
二匹の招き猫と暮らしている。

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