ようかんのちょっとひとくち

[ストーブの温もり哀し隙間風我が背撫でゆく悪寒となりて]

着膨れて炭を熾す日々。もしかしたら、このまま冬が越せるのではないかと調子にのっていた。春のような天気に後押しされ、鼻歌交じりではじめたお風呂の大掃除。水しぶきを浴びながら天井から床まで磨きをかける。あくる日、見事に風邪をひき久しぶりの発熱に唸る私。石油ストーブ無しで冬を乗り切ろうとした意地っ張りへの「いい加減にしておかないと本当に凍えるぞ」という、身体からの警告だろうか。冷える手足。きしむ節々。乾燥していつもいがらっぽかった喉はヒリヒリと痛みを伴い、むせるような咳を出す。連続して背中をのぼってくる寒気に堪えきれず、とうとうストーブを初点火。毛布を羽織ってストーブの前で丸くなり、むさぼるように暖をとる。二日間寝込み、普段の生活に戻っても一度覚えたストーブの温もりに味を占め、しばらくはストーブとの共生が続いた。ストーブと共に過ごす暖かい毎日。ところが、ぬくぬくとストーブの前にいると、ときおり部屋を駆け抜ける隙間風がやけに冷たく感じる。火鉢で暖をとっていたときには気にならなかった隙間風が、暖かなストーブの前では冷気となり私の背中を撫でていく。最初にひと撫でされたときには悪寒と勘違いして、風邪のぶり返しかと焦ったくらいだ。あたたかなストーブの温もりが私に余計な寒さを感じさせるようになったとすれば、それはそれで皮肉な話。ただでさえ寒い話が多いこの冬、ストーブの前で薄着になるより、重ね着をして火鉢にすがりついた方が温かいのかもしれない。


[自己責任痛手となりて残りけり注意書き無視したツケは大きく]

 発熱から三日後、久しぶりの入浴。準備のためにお風呂の戸を開けると、そこに待っていた悲しい現実。熱が下がり、体調は戻ったというのに、割れた風呂の蓋は元に戻っていなかった。お風呂の大掃除でやらかした大失態の傷痕だ。お風呂の大掃除は天井のカビ落としからはじめる。毎回、椅子を持ち込み踏み台にして事を成す。ところが、その日は朝から気分が絶好調、風呂掃除が終わったら次は換気扇とガス台の掃除だと張り切っていた。台所から椅子を運ぶのももどかしく、天井の掃除は浴槽の蓋に乗ってやろうと考えた。人は心が軽いと自分の体重まで軽く思えてしまうものだろうか、このときには蓋に乗ってもビクともしないように思えた。けれど私の体重はいつもと何ら変わりなく、蓋の上で小窓に掴まりながら片手で天井の一角を拭き、体の向きを変えようと一歩先に動いた矢先、蓋の割れる音が響いた。プラスチック製の蛇腹式の蓋は軽い。蛇腹の一本いっぽんが空洞で予想以上に脆く、注意書きどおり、上に乗ってはいけないのだった。見事に割れた風呂の蓋。怪我こそしなかったものの、自己責任の結果は大きな痛手となって残った。くれぐれも商品の注意書きと自分の体重を軽く見ないほうがいい。でないと、とんでもない結果が待っている。


[献立名考え楽しむ貧料理フルコースには程遠いけど]

 朝に食べた鯵の干物が残っている。これを食べずに捨てようなんて思わない。お皿のまま夕飯に持ち越してもいいのだけど、それだと如何にも残り物をつついているようで品がなく、何だか虚しい。そこでひと工夫。鯵の身をほぐし、スプーン一杯の海苔の佃煮とあえる。違う器に盛り、大根おろしを添えれば貧相な残り物が一新、夕食にふさわしい一品に生まれ変わる。緑が欲しいときには、ネギの青いところを刻んで添えたりもするが、それよりも肝心なのが、残り物をアレンジして作ったおかずの名前を考えること。この場合の献立名は「ほぐし鯵の海苔あえ 大根おろしと共に」とつけてみた。後の部分の「○○と共に」というのを付け加えるのが最近、特に気に入っている名前の付けかたで、これを付け加えると何だかプロっぽくなるのだ。早い話、お弁当なら日の丸弁当で決まる組み合わせでも「炊きたての白米 梅干と共に」なんて名前を考えただけでちょっとしたシェフ気取りになり、ご飯と梅干だけの食事が楽しくなってこないだろうか。世知辛い世の中、私腹を肥やせぬものは食べていくのが精一杯。外食なんて夢の世界だ。せめて献立名だけでもプロっぽくしたい。あれこれ名前を決めながらお皿を並べていくとそれだけで、フルコースを食べているような優雅な気分に浸れるのだから・・。
よ

招きます 筆者紹介:ようかん
日本生まれ、国内在住。
図書館で出会った「貧乏神髄」に惹かれ、会長のサイト見たさにパソコンを覚え今に至る。
猫好きだが借家のため飼う事が出来ず、
二匹の招き猫と暮らしている。

ホームへ戻る このコンテンツのホームへ このページのトップへ
---
ようかんのちょっとひとくち 耐乏PressJapan.
発行:全日本貧乏協議会
COPYRIGHT © Takuya Kawakami. ALL RIGHTS RESERVED.
掲載されている写真・文章等の無断転載は硬くお断り致します
takuya.kawakami@gmail.com