第三二回
貧よく暮らす:其の二 スーパーでの心得
平成一八年一二月一六日
食は身体の基本。貧者の基本は身体。少し冷えてきたからと風邪をひき、薬だ医者だとお金を使っていては、貧者の財布なんてすぐに底が見えてしまいます。毎日を健やかに過ごすために、でんぷん喰いに走ったり、腹持ちをよくするための油料理に走ったりすることは避け、メタボリック知らずで医者要らずの健康体で居ることが、貧者の必須条件なのです。
ただでさえ軽い財布の中から、充実した食事を作り出すのは容易なことではありません。お買い得品を求めてスーパーに通い、ときには目玉商品を得るために、開店前の長蛇の列に加わることも必要になってきます。日曜日の朝に見られることが多い、『超目玉商品の行列』に加わる際によく行なわれるのが、「後ろから押す」行為です。
これは私の体験ですが、後ろからカートで押された拍子に前の人にぶつかり、ぶつかった相手から「肘鉄」をくらわされたことがあります。悲しい出来事でしたが、人間の嫌な一面を思い知らされたいい経験として、心に残っています。
列に並ぶ人にとって、超目玉商品を手に入れたいと思うのは誰でも同じ。カートやレジ籠で臀部をぐいぐい押されても、いい気持ちにはなりません。はやる気持ちを抑え、人と談笑しながら並ぶのは、傍から見ても微笑ましいものです。行列に加わる時には騒がず押さず、平穏な気持ちで並ばれるのをお勧めします。運悪く自分の前で品切れになったとしても、店員に逆切れすることなく、速やかに列から離れましょう。
スーパー内に点在する見切り品のコーナーは、消費期限が迫った格安商品を手に入れるチャンスですから、避けて通るわけにはまいりません。半額シールを目印に、積極的に覗いてまわりましょう。此処でもレジ籠の位置に注意し、同じコーナーを見る他の仲間たちに気を配りたいものです。真ん中にカートやレジ籠を構え、コーナーを独り占めするような行ないには、浅ましささえ感じます。貧格を持った貧者なれば、レジ籠は常にコーナーの脇に位置付け、他の仲間が食材を探す場所を空けておくのを忘れないようにします。
次に、見切り野菜のワゴンも見逃せません。当然ながら、見切り野菜には消費期限がついておらず、ここでの選び方は貴方の腕にかかってきます。ワゴン上の見切り品が野菜くずに等しいものなのかどうなのかを、鋭く見極めねばならないのです。
葉もの野菜は鮮度が一目瞭然で、選びやすいものですし、根菜の人参や大根も、しっぽが痛んでいるくらいは何ともありません。いい具合にしなびた大根は、漬物や切り干しにすれば美味しく食べられるので、求めたい品物のひとつです。ただし、厚い皮におおわれた食材には、裏切られることが多々あります。手にとり、そっと裏返し、納得して選んだはずのグレープフルーツを切ってみたら、期待はずれでジュースも搾れない。これぞ!と買い求めた里芋の皮を剥いたら、色白のはずだった肌が何やら変色している。半分以上を削り取り、残りは僅か一口分だけ・・。これでは、「お買い得」も何もあったものじゃありません。
『貧すれば鈍する』といいますが、貧すればこそ鋭敏になり、見た目に惑わされることなく、よいものを選び抜く力を身につけたいものです。自分で選んだ見切り野菜が半分以上ゴミになってしまえば、それは貴方の財布と身体に直接響いてくるのです。大切な財布の中身をゴミのような安物で失うか、バランスの良い食事を市価の半値以下で揃えられるのかは、全て貴方の力量次第。見栄っ張りな外見に騙されずに『もの』を見極める力をつけ、スーパーへと出かけるのであれば、貴方の財布もお腹も大満足。より健やかに、満ち足りた日々を過ごせることでしょう。
筆者紹介:ようかん
日本生まれ、国内在住。
図書館で出会った「貧乏神髄」に惹かれ、会長のサイト見たさにパソコンを覚え今に至る。
猫好きだが借家のため飼う事が出来ず、
二匹の招き猫と暮らしている。
過去のひとくち
第一回
会長は左利き!?
第二回
知恵袋
第三回
貧的生活
第四回
小さな戦い
第五回
御利益
第六回
貧句
第七回
冬支度火鉢編
第八回
火鉢事始
第九回
文質彬彬
第一〇回
夢合わせ
第一一回
貧者の銭失い
セピアな色に染めないで
其の一
お弁当箱
其の二
遺されたもの
其の三
かめ
其の四
叔母の残像
其の五
赤いミキサー
其の六
かせくり器
其の七
薔薇のつめきり
其の八
竹行李
其の九
卓上時計
ちょっとひとくち第二部
第二一回
たまごひとつ分のしあわせ
第二二回
タオルの価値
第二三回
貧の楽しみ:花
第二四回
貧の楽しみ:家
第二五回
貧の楽しみ:衣
第二六回
貧の楽しみ:肉
第二七回
貧の楽しみ:薬
第二八回
貧の楽しみ:本
第二九回
貧の楽しみ:道
第三〇回
貧の楽しみ:髪
第三一回
貧よく暮らす:貰い物の心得
第三二回
貧よく暮らす:スーパーでの心得
第三三回
貧よく暮らす:台所の心得
第三四回
貧よく暮らす:衣類の心得
第三五回
貧よく暮らす:「鍋」の心得
第三六回
貧よく暮らす:入浴の心得
第三七回
貧よく暮らす:就寝の心得
第三八回
貧よく暮らす:春の鼻
第三九回
貧よく暮らす:飲酒の心得
第四〇回
貧よく暮らす:こころの心得
第四一回
貧よく暮らす:ナメクジの心得
第四二回
貧よく暮らす:食の心得
第四三回
貧よく暮らす:嗜好品の心得
第四四回
貧困歌
第四五回
貧困歌
第四六回
財布の御機嫌
第四七回
師走の閑話
第四八回
心の奥で想うこと
第四九回
軒下ものがたり
第五〇回
【春・貼る・張る】
ようかんのちょっとひとくち 耐乏PressJapan.
発行:全日本貧乏協議会
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