ようかんのちょっとひとくち

 しとしと、じめじめ。空も空気もどんよりと重く、心まで湿りそうなこの頃。雨が続けば玄関の天井にうっすらと白いカビが生え、縁側には雨が振り込んでもいないのに染みが浮かぶ。
 「古」の一文字で表されるような外見。梅雨どきには夜中に畳のあいだから這い出してくるナメクジを、朝一番に踏まないように目を光らせなければならないが、もともと純和風の佇まいが気に入って借りたこの家。此処で暮らす以上、少しでも楽しみながら毎日を過ごしたいと思っている。

 貧者とはいえわたしも「おんな」。質素な暮らしながら、ほんの少し潤いが欲しい。せめて花を飾っておきたい、との思いから、内蓋が壊れて使い物にならなくなった胡椒の小瓶にワイヤーを付け、壁に下げられるようにした「花入れ」を作り、トイレの壁に掛けている。
 胡椒の瓶はラップと割り箸を使えば簡単に洗える。瓶に少量の水とちぎったラップをくしゃっと入れ、割り箸一本を指代わりに使い、先に入れておいたラップを割り箸で押さえながら瓶の内側をこすれば隅々まできれいになる。瓶の肩の部分は割り箸の角度を変えながらこすればいい。花をいけていて水が汚れた時や、内部に緑色の苔がついてきた時にも同じようにして洗う。

 この小瓶に、今日はイソトマの花をいけている。イソトマは、以前に裏庭で作っていたものがこぼれ種から芽を出してくれるようになったので、毎年咲くのを楽しみにしている涼しげな青い花。
 わたしには切り花を花屋で買うことは贅沢極まりないことだし、切り花を楽しむために店で苗を買い育てる余裕も無い。それで普段は、散歩の途中で見つけた雑草の類や、裏庭に自生するシダ類、先のイソトマのようにこぼれ種で咲く花を必要に応じて摘み取っている。

 春の楽しみはすみれ。我が家に自生する匂いすみれの季節のトイレは本当にいい香り。瓶に挿した数本の匂いすみれでも、トイレの戸を開けるたびにくらくらするほど春の匂いで一杯にしてくれる。また、散歩道で摘んだスズメノテッポウやスズメノヤリにタンポポをあしらうのも面白く、ナズナやタネツケバナなどが咲かせる小さな白い花もかわいい。
 これからだったら、えのころ草とつゆ草の組み合せ。つゆ草を摘むと雨が降るって聞いた記憶もあるけれど、そんなことはおかまいなしで摘んでくる。グリーンを楽しむのだったらかやつり草も面白い。かやつり草の種類には「和」の風情があり、我が家のトイレにしっくりと合う。また、秋口から咲き始めるミゾソバの花も可愛い、これは昨年ようやく在り処がわかった。

 わたしの散歩道を楽しませてくれる「雑草」という俗称で一括りにされている草花たち。歩きながら目に入る草花たちから胡椒の小瓶に似合う花を見つけ、選びながら摘むその一つ一つに付けられた名前は、彼らにぴったりの可愛いものや面白いものなど、数多くありすぎて、わたしには彼らの名前を全部覚えるような気力が出ないのが残念。
 だけど、彼らを眺め、楽しむ心はいつまでも持っていたい。わたしの暮らしに楽しみと潤いを与えてくれ、四季の変化をいち早く感じさせてくれる草花たちは、足早に通り過ぎてしまえば見落としてしまうような場所で、今日も色とりどりに小さな花を咲かせている。

花入れ

−− 湿りがちな心を爽やかにしてくれるのは
小瓶の輝きと「名」のある花たち −−
よ

招きます 筆者紹介:ようかん
日本生まれ、国内在住。
図書館で出会った「貧乏神髄」に惹かれ、会長のサイト見たさにパソコンを覚え今に至る。
猫好きだが借家のため飼う事が出来ず、
二匹の招き猫と暮らしている。

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ようかんのちょっとひとくち 耐乏PressJapan.
発行:全日本貧乏協議会
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