ようかんのちょっとひとくち

 新芽を出し始めたクレソンに真っ黒な芋虫がわんさと集っていたり
 量り売りのアサリのパックの底から小石がふたつも出てきたり
 買ってきたばかりのジャガイモを切ったら中央に茶色の空洞が出来ていたり
 スーパーで会計後の袋詰めをしているときに見知らぬおばさんから
 「今、買ったんだけどこの肉、痛んでないかしら、匂い変じゃない?」と、
 鼻先に封を開けた牛肉(国産ステーキ用!)のパックを突きつけられたり

 こんな日常の、ちょっとだけ悲しくなってしまうような、そんな些細な出来事も、人参のしっぽをすりおろしたものや、夕べの残りのきんぴらゴボウなどをやさしく包み込みながら、ちゃんとしたメイン料理に生まれ変わらせてくれる貧者の味方、たまご。
何んにもないと思っていた冷蔵庫の隅にたまごをひとつ発見する。 それだけで心躍るわたしは小さな人間なのかもしれない(笑)。

 たまごがひとつあれば今日の食事は安泰。
 たまごひとつ分のささやかなメイン料理。

 たまご料理といえば『オムレツ』、これは外せない。
オムレツを焼く時にはたっぷりとバターを使いたいところだけれど、そんな贅沢はできない、そうかといってバターの代わりにマーガリンを使うのは私の中に残っている小さなプライドが許さない、だって香りが違うんだもの。
ことオムレツに関してはバター、貧者といえどもこれだけは譲れない(笑)。
熱したフライパンにサラダ油と香り付けのバターをちょっぴり落とす。
溶き卵に少量の牛乳を混ぜるのも、みじん切りの炒め玉ねぎや、魚肉ソーセージ、粉ふきいもなど、あれやこれやを混ぜるのは全て食事のバランスを考えて・・なんて言いたいけれど、本当の理由はただひとつ。
たまごにボリュームをつけるため、ただそれだけのために他ならない。
玉ねぎを入れるときには先に甘味が出るくらいゆっくりといためたり、
魚肉ソーセージ入りオムレツの時にはネギを刻みいれて和風にしたり、
粉ふきいもを入れたときには暖めた刻みトマトをソースにしたり、と、冷蔵庫に首を突っ込み、野菜の切れっぱしやお皿のまま冷やしてある残り物と相談しながら、オムレツの『具』を決めてゆく。

 ここ最近のヒット作はセロリを入れたオムレツ。
セロリと言ってもしゃきしゃきの茎は使わない、セロリの茎は生で食べるのが一番美味しいと思うの。で、セロリを買ってきたら、大抵二日ぐらいで茎を先に食べてしまうので葉っぱが残ってしまうことが多い。セロリの葉っぱは茎よりもちょっとだけ癖が強く、スープにするときにも分量に気をつけないと苦味がでてしまうような扱いにくさがある。オムレツにする時にはまず、葉を数枚むしり取る(笑)。そして、みじんに切り、塩もみする。塩もみして出てきた水分をぎゅっと搾って少量の牛乳を入れた溶き卵にまぜてオムレツに焼き上げる。塩もみした葉を入れるので、たまごに味をつける必要は無い。たまごと混ぜて焼くだけでいい。
バターの香りがふんわりと漂う焼きたてのオムレツを、薄切りにした冷やしトマトを敷いておいたお皿に盛り付け、冷めないうちに頬張る。

 ナイフとフォークを使い、冷たいトマトとあつあつのオムレツを切り分け、同時に口に運ぶ。粉を練ってフライパンで焼いた歯ごたえのあるパンと、バターの香りがするやわらかいオムレツを交互に食べる遅めの昼食。こんな、何でもないひとときが、ときおり涙ぐむほど大切に感じられる。

−− こまごまとした悲しみは全てたまごに包み込む
食べ終わる頃には心の消化が終わっている(笑) −−
よ

招きます 筆者紹介:ようかん
日本生まれ、国内在住。
図書館で出会った「貧乏神髄」に惹かれ、会長のサイト見たさにパソコンを覚え今に至る。
猫好きだが借家のため飼う事が出来ず、
二匹の招き猫と暮らしている。

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