「ゼンマイを強く巻きすぎてはいけないよ、早く傷んでしまうからね。」
−−父の教えを未だに守りつづけている
−−
私が愛用している卓上時計はゼンマイ式。初めて手にしたのは10歳の頃。
それまで学習机を持っていなかった私を見かねて祖父が簡単な文机を作ってくれた。そのときに「これからは時計も要るだろう。」と、父から譲り受けたのがこの時計で、自分のものになったしるしに貼った苺のシールも当時のまま残っている。元々は旅行向けに作られ、コンパクトに折りたたむことが出来るこの時計には目覚まし機能も付いており、ベルの音が控えめなのもお気に入り。
毎日、忘れないようにゼンマイを巻く。
たったこれだけでず〜っと動いてくれ、チッチ、チッチと時を刻む音さえ心地よく、むしろ、この音を聞くたびに時間を大切にしなければ・・との思いが強くなる。乾電池も使わず、電気も消費しない。使うのは自分の指だけ(笑)。
チープな暮らしをしている私にはゼンマイで動くこの時計がぴったりなの。
この、自分の指でゼンマイを巻くっていう行為が面倒くさくて不便に感じたのかもしれないけれど、今、店頭で見かける置時計は殆どが乾電池式。
確かにゼンマイを巻き忘れると知らない間に止まってしまう。
でも、乾電池式の時計だって電池が切れたら同じように止まるじゃない。
そんな時には買い置きしておいた乾電池を使うか、乾電池を買いに店へと急ぐかどちらかでしょ?ところが、わたしの時計は針が止まっていたらゼンマイを巻けば簡単に復活するの。乾電池を買う必要が無いって素敵だと思わない?
ゼンマイで動く時計って省エネグッズの極みだと思うし、ある意味で時代の最先端を行っているような気さえするのだけれど・・(笑)。
電気コードに繋がれた時計は論外。
ストーブやガステーブル、瞬間湯沸し器
我が家に残る便利な道具達は皆
乾電池を呑み込んでいる
乾電池がないと点火できない
便利な道具たちの小さな不便
海外のお洒落な暮らしを夢見て、便利な生活に憧れたあの頃の大人たち
憧れの暮らしを手に入れたはずなのに
あれも足りない、これも持っていないと、ないものばかり追いかける
ものに囲まれ、手を伸ばせば欲しいものに手が届く今の時代
手に触れたものは本当に欲しいものなの?
誰かが持っているとか、流行だとかはキリのない言い訳
店の中では眩しいほどに輝きながら
多くのモノたちが買われてゆくのを待っている・・
慈しみ、育む、畏れ、敬う
不便なものに隠れていた
暖かなものを捨て去った
便利な暮らしと引き換えに
無くしてはならないもの
忘れてはならないもの
多くのものを失った
便利なものを追い続けるものたちよ
その先に見えるものは何?
電子レンジを使ったことが無く、携帯電話の使い方さえ知らない私。
そんな私の持ち物は骨董品のような価値も無く、アンティークとも言えないような古惚けたものばかり。けれど、私が見る彼らはまだ現役で色あせてはいないのです。今回でひとまず【セピアな色に染めないで】はお終いになりますが私の周りにはまだ、たくさんの『昭和』たちが生きています。これから先もお気に入りの彼らに囲まれ、ようかんらしくチープに楽しく、ゆったりと暮らしていきたいと思っています。