ようかんのちょっとひとくち
部屋の片隅で時折聞こえていた小さな物音。何日経ってもコトコトいっている。
今日こそはと耳を澄まし、隙間用引き出しから聞こえてくるのを突き止めた。
一番上の引き出しを確かめる、何も居ない、ん?、おかしいな。
二段目の引き出しを開けた途端、「ちゅっ!」と鳴いて、子ねずみが顔を出した。

居た!やっぱり居たんだ。驚きの余り引き出しを閉めてしまった。胸はどきどき。
こんなにときめいたのは何年ぶりかしら・・、なんて思ってる場合じゃない。
閉じてしまった引き出しの中、小ねずみは物音ひとつ立てやしない。 一体、何時から居たんだろう、どうしようか。悩んだ挙句に本体ごと裏庭に持っていき、二段目の引き出しを引き抜いたのと同時にねずみは飛び出し逃げていった。
後に残ったのはシュレッダーを使ったかのようになった紙類と輪ゴムの箱。
齧られた携帯ラジオのイヤホン、大小のねずみの落し物・・そして私の涙。

後始末を終えてほっと一息。気がつけばもうお昼の時間。
今日のお昼は牛乳を入れたふわふわの炒り卵にマヨネーズを加え、パンに挟んだ簡単サンドウィッチと ようかん風リッチコーヒー(笑)。

招き猫 「それにしても貴方じゃねずみを獲ることは出来ないわね」
と、パンを頬張りながら床の間に目をやる。床の間には二匹のまねき猫。
ねずみを獲ってくれる猫の方がいいに決まっているけれど悲しいかな我が家は借家。
せめて、まねき猫だけでもと実家から持って出たものと後から買い足したものが居る。

まねき猫の大きい方は築50年以上の我借家と同じくらい古いものらしくって、昔あった立派なひげがすっかり抜け落ちて色も熟成し貫禄をも感じさせるようになった。
元は実家の猫だったのに今では我が家にすっかり馴染んでくれている。 ・・「これだけ貫禄が出てきたのなら偶には何か招いてみたら、ねずみはもう充分よ」

この時の独り言を老猫が聞き入れてくれたのかどうかは定かじゃないけれど、
何とこの冬、我が家に「火鉢」がやってくる・・と、いうか、もうあるんだけど(笑)。

火鉢 川上会長の生活に触れる度、欲しいと思っていた火鉢が実家に眠っていたなんて、どうして今まで気づかなかったんだろう。やっぱり老猫が導いてくれたのかしら。
実家の大掃除に借り出され、倉庫にまで入った甲斐があったというもの。
しぶしぶ倉庫に入ったものの、火鉢を見つけて豹変し、倉庫内をかき回した挙句に「木製行火」まで発掘し、持ってきてしまったの。

ああ、これでまた憧れの暮らしに一歩近づける(笑)

一人用の小さい「火鉢」には、「松・竹・梅」と「鶴」の模様がついている。
実家の倉庫では何とペアーで眠っていたのをひとつだけ持ってきたものでさすがに灰は入っていなかったものの何処も悪くなっておらず、まだまだ現役で使える。

これが木製行火だ! そして先人の知恵と職人技が一際光る「木製行火」。
私が子供の頃にはもう、お蔵入りならぬ倉庫入りしていた一品。
[豆炭行火]はうっすらと記憶しているものの、木製行火を使った記憶は無い。
木製行火の内部に迫る 写真で見ていただいた方が分かりやすいと思うけれど、六角形の木枠の中に小さな鉄製の火鉢が入った行火(あんか)で火鉢部分がくるくると回転するように動き、常に上を向いた状態になるので行火自体が倒れたとしても火鉢の炭火がこぼれず、安心して使えるように工夫してあり、また火鉢の蓋は二重になっていて動かすと通気用の窓が開くようになっている。
木製のぽっちを押すと木枠が開くので、その状態にしておいて炭を入れたりするらしい。

木製行火は暖房用として使うのはもちろん、花台として飾っても見栄えするかも。
壊れたままテーブル化している炬燵の下に置いて使うのもいいかもしれない。
そうなると押入れに詰め込んだままになっている炬燵布団の点検もしなくっちゃ。

小さな火鉢は水仕事の合間にちょっと手を温めたり、一人用の薬缶をかけてコーヒー用のお湯を沸かしておくのもいいな、川上会長が何処かに書かれていたようにパンを炙るのも香ばしくって美味しそうだし、五平餅を焼くのも楽しそうじゃない?
置き場所は文机の横に決めようか・・。時代を遡っていくような不思議な感覚。
懐かしさを通り超えた新しい暮らしの形になりそうで今年の冬支度が待ち遠しい。

頭に浮かぶのは冬景色、早くも北風が吹き、雪が降り積もっている(笑)。
火鉢の上で繰り広げられる、明るくて健全な大人の火遊びを想像しながら、冬の訪れを楽しみに待つことにしよう。

−− 我が家のまねき猫は、ねずみを招いたり、
火鉢を招いたりと忙しいがお金だけは招いてくれない −−
よ

招きます 筆者紹介:ようかん
日本生まれ、国内在住。
図書館で出会った「貧乏神髄」に惹かれ、会長のサイト見たさにパソコンを覚え今に至る。
猫好きだが借家のため飼う事が出来ず、
二匹の招き猫と暮らしている。

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