タイトル写真 耐乏Press Japan.
全日本貧乏協議会
FEB.
2001

目次
特集

 貧乏人、東京へ行く

連載記事

 不定期新連載
  これ、もらいました(感涙)(1)

  貧乏彩時記(7)

  投稿記事

 貧評会
 貧乏料理
 読者の声


 編集後記/次号のお知らせ

特集
貧乏人、東京へ行く
古本を求めて55キロ
日本の首都・東京にはさまざまな文明文化が折り重なっています。田舎では満足に手に入らない古本を求めて旅に出た貧乏人の一日を赤裸々に綴った大スペクタクル作品。
特集タイトル写真
●僕の街の本屋事情

 僕の街、石下町には大きめの本屋さんが二件ほどあります。実は、それ以外に本屋さんがあるのか、僕は知らないのです。大きめと申しましても、東京近郊にあるようなビルディングの立派な本屋さんではなく、売場の半分はビデオやCDにスペースをとられている状態ですから、本の数は少ないのです。そんな少ない本の売場においても、雑誌が多く扱われておりますから、文庫などはちょこっとしかありません。
 たとえ立派な本屋さんがあったとしても、僕には定価で本を買うだけの財力はありません。自然と、古本屋を利用するのが日常になるわけですが、石下町には古本屋はありません。車で近隣の街へ出かけるといった状態なのですけれど、古本屋も件数は少なく、同じ本が並んだままの硬直状態が続くこともありまして、思うように本が手に入らない日々を過ごしているのです。

 そこで、ここはひとつ、列車代を奮発いたしまして、東京へ古本を探しに出かけることにしました。おにぎりとカメラを持って、貧乏人は東京へと向かったのです。

●電車じゃないです、関東鉄道

石下駅  石下町には、関東鉄道常総線の駅があります。朝、八時の列車に乗るために、車で駅へ向かいました。路線バスなどという物が満足に行き渡っていない街ですから、駅にはちゃんと駐車場があります。駐車は無料ですので、これは有り難いことです。朝早くと夜遅くは無人駅なのですが、朝の八時ともなりますと、ちゃんと切符の販売機も動いているし、駅員さんも居ます。以前、まだ夜の明けきらない時間に利用したときは、切符を買わずに乗るとは知らずに列車を見送った経験もあります。東京から一番近い単線の列車は、電車ではなくディーゼル車両です。

列車に乗り込む  ホームには、列車を待つたくさんの高校生がすでに群れていました。石下駅でこんなにも多くの人を見たのは初めてでした。若い人たちばかりでしたから、ホームのベンチには誰も座っていません。徹夜明けで朦朧としていた私は、ベンチに座って煙草を吸って過ごしました。列車の時間は調べておきましたから、5分もしないうちに、取手行きの上り列車がのんびりとあらわれます。こんな駅で下車する人がいて少し驚きましたが、やがてホームの人を全て飲み込んだ列車は、発車ベルもなしに走り出したのです。石下駅から列車に乗ったのは二回目でしたので、すこしわくわくしました。

車窓からは雪の残る風景が  今日は月曜日。週末に降った雪がまだ残っています。関東鉄道は電車ではなくディーゼル車ですから、それほどスピードは出ません。駅を出て、徐行運転のようにゆらゆらと走り出し、そのままの速度で次の駅に着いてしまいます。線路に沿って走る車に追い抜かれながら走る単線のディーゼル車は、やがて水海道という駅に到着します。関東鉄道は、取手−水海道間は複線ですが、それ以降は単線です。石下から「取手行き」と書かれた列車に乗ったとしても、水海道で乗り換えなければならないのです。石下から取手まで、車なら30〜40分で行ける距離を約一時間かけて走りますから、座席に腰掛けて一眠りしたいところですけれど、乗り換えがあるのでそうもいかないのです。車なら、どんなに時間がかかっても40分の距離を行く列車の切符代は、970円です。

 とにもかくにも、一両編成から二両編成に乗り換え、列車は取手へと走り出したのです。車窓からの風景は、徐々に都会色を帯びて行きます。

●JRって、やっぱり凄いです

取手駅の関東鉄道改札  取手駅に着くと、それだけで十分に都会を味わえます。関東鉄道のホームは、どこか色褪せたような雰囲気がするのですけれど、改札を抜けると、今まで乗っていた列車からは想像もつかないような立派な改札に出会います。自動改札なのです。どきどきしながら切符を入れると、切符はシュッと吸い込まれていきます。かつては毎日のように行っていた自動改札へ切符を喰わせるという行為も、二年も離れていましたから、緊張してしまいました。失敗したらどうしようという気持ちでいっぱいです。JRの券売機も懐かしかったのですが、タッチパネルの中でお辞儀をするイラストにまたもや戸惑いを感じたのです。石下から取手までは970円もかかりますが、それよりも距離のある取手−秋葉原は690円です。都会を感じられる値段です。

電車だぁ  JRの自動改札も無事に抜けることができ、常磐線のホームを探しました。ホームに下りたときには電車が居たのですけれど、間に合いませんでした。しかしなんと、別のホームには、既に上野行きの電車がとまっているではありませんか。凄いなあと思いました。電車の時間なんて気にしなくても済むのです。行けば、間もなく電車が来るのです。JRって凄いなあと感じました。次は逃したくないと思いましたから、すぐにホームを移動して電車に乗り込みました。でも、ちょっとワサワサとした感じがして、どうも落ち着かないなという思いもありました。ゆっくりと煙草でも吸いながらという気持ちがすっかりとどこかへ行ってしまうような、不安な感覚がしました。

 もう、通勤時間としては遅い時間でしたから、スーツ姿の人は疎らでした。座席に座って発車を待つ人々は、ゲームをしたり、携帯電話を忙しく指で押したりと、さまざまです。先ほどの電車が出て行ってからそれほど時間は経っていませんけれど、発車を知らせる音楽が鳴って、ドアが閉まり、僕の乗った電車も走り出しました。電車の力強さを感じさせる加速で、あっという間に取手駅を後にします。少し眠ろうかと思いましたが、窓の外に広がる風景に愕然としてしまって、眠れませんでした。なにしろ、速いなあと思ったのです。電車が、家々の屋根を下に走っていたかと思えば、すぐに潜るようにしてコンクリートの谷間を走るというようなことが目まぐるしく繰り返されて、驚かずには居られませんでした。遠くの方に、川口の超高層マンションが見えました。

●秋葉原から、神田神保町まで歩きました

秋葉原の電気街  上野で京浜東北線に乗り換え、秋葉原に着きました。緊張しながら自動改札へ切符を入れようとしましたところ、うまく入れることができず、ちょっとまごまごとしてしまいました。電気街口から表に出ますと、駅はビルに囲まれていて東京に来たのだということが実感できます。晴れているのに、ビルに囲まれているのでお日様が見当たりません。まだ、目覚めきっていない電気街を吹いてくる風が、無機質な臭いと一緒に体にまとわりつくようにしてきますし、陽も遮られていますから、寒かったです。
 ここから神保町までは、30分ほど歩けばよいはずです。地下鉄を使うともっと早く着きますし、疲れないのが魅力ですけれど、だいいちお金がかかります。秋葉原から神保町までには、空襲を逃れた建物もありますから、ぷらぷらと歩くのも良いかなと考えたのです。きらびやかな電気街を抜け、神保町へ向かいました。

神田の藪 まつや  秋葉原から神田神保町までには美味しいものがいっぱいあります。鰻も甘味も良いですが、なんといっても蕎麦なんざあ、食べたいなあと思ってしまうのです。ああ、食べたいとは思うのですけれど、予算が限られております今回の東京行きでは、残念ながら食べることは叶わないのでした。いつの日か、蕎麦味噌で一杯、蕎麦がきでもう一杯、最後にせいろ二枚なんてことをおごってもらいたいなあと考えながら、傍らを通り過ぎました。

 靖国通りに出ると、東京に来たんだという気持ちが改めてこみあげてきました。ああ、僕は今、東京を歩いているのです。

●いきなり見つかるのです

 大きな道路の脇に、これまた大きな歩道。どきどきしながら横断歩道を渡り、携帯電話をかけながら歩いているかと思えば急に立ち止まるスーツ姿にぶつかったりしながら歩いていくと、古本屋が現れ始めました。とりあえず、十分に広い裏通りにあった古本屋さんに入ってみると、入り口に無造作に積まれた岩波新書の中に、探していた本がいきなり見つかりました。200円でしたから、いつも100円で買っている僕には一瞬のためらいもありました。けれど、高いだろうということはあらかじめ覚悟をしていたので、購入することにしました。この本屋さん、熱心に本を読む男性客が店の中程に固まっておりましたので、最初にはさすが東京だなあと感じたのですけれど、その熱心さの訳は間もなく、僕もそこへ行ったときに判明しました。お店の半分以上は、性風俗に関する書籍や原色の雑誌を専門に陳列されていたのです。そのお店で、手頃な辞書も500円で見つけたのですが、これは、他の本屋さんも見てみようと思いましたので、そのときは岩波新書だけを購入しました。

古本屋  街を進めば進むほど、古本屋が。東京って、凄いですね。相変わらず陽が当たらなくて寒いですけれど、列車代をかけてやってきた東京ですから、徹夜明けの体を引きずるように歩きました。
 美術関連の書籍が充実している古本屋で、好きな写真家の写真集を探してみましたけれど、残念ながら見つかりませんでした。見つかっても、他の写真集に付けられた値段からすれば、きっと手のでない物だったでしょうから、仕方がありません。もとより今回は、写真集を買うだけの資金は用意できていませんし、あきらめてはおりました。

地図  さすがに東京の古本屋だと思うのは、ディスプレイの凝りようでしょうか。こういう街を歩いているだけで、なんだか賢くなったような気がするのですから不思議です。でも、ビルとビルの隙間から風が吹いてきて、陽も当たらないものですから寒いから参ってしまいます。徹夜明けでしたから、トイレも近いのです。なぜ、寝ていないとトイレに行きたくなるのかはよくわかりませんけれど、とにかく、トイレのありそうなビルはないかと辺りを見回しまして、三省堂書店にて用を済ませることが、三回ほどありました。

●公園を探しました

お昼過ぎまでうろうろ  神田神保町に到着したのが10時半くらいでしたでしょうか。それから2時間あまり、古本屋に入ってはじいっと背文字を読みながら上下左右することを続けていましたから、さすがに疲れました。ここらでお昼御飯にしようと思いまして、公園を探しました。東京の地理は皆目見当もつきませんから、地図を立ち読みいたしましたところ、どうやら水道橋駅の方に公園があるようです。お昼時なので背広姿の人も多く見られる街を、公園を探して歩きました。

緑あるところ、公園あり  ここらを曲がった辺りだろうかと見当をつけて路地を曲がりますと、確かに、遠くの方に緑が見えました。ビルの立ち並ぶ陽の当たらない寒い街の中で、陽を浴びて伸びをしているような緑がビルに負けまいと立っています。路地に入ってしまいますと、ビルに囲まれて陽の当たる時間が短いようですので週末に降った雪が凍ったまま残っている場所が多く、用心をしながら公園へとたどり着いたのです。

ぽっかぽかの公園  やっと公園に着きましたけれど、お昼時ということもあって、ベンチはおろか、座れそうな場所はコンビニやファーストフードの包みを傍らにお昼を楽しむ老若男女で埋まっていました。公園は陽が十分に差し込んできますから、久しぶりに芯から暖められた心地がしました。けれども、もうしばらく経たないと座れそうにもありませんでしたから、おそらくは学校や会社の昼休みが終わるであろう13時過ぎまで、街の中を歩くことにしました。この頃になると、陽を浴びて気持ちも少し緩みましたから、空腹感が増してきました。早くお弁当にしたいなあなどと考えながら、学校の校庭がゴム張りだったりすることに驚いたりしながら歩きました。

●塩むすびを食べました

 13時を過ぎまして、そろそろ公園も空いているだろうと思いましたので再び訪れましたら、ベンチがひとつかふたつ、空いていました。ようやくお昼が食べられるとほっとしましたとき、家を出る際に水筒を忘れてきたのを思い出しました。自動販売機でお茶を買うのもどうかと躊躇したのですけれど、水分も摂らなければ具合が良くないと思いましたので、120円で温かいお茶を買いました。

塩むすび3個  朝の6時に握った塩むすびは、鞄の中で押し合いへし合いをしたらしいでこぼこを作っていましたが、東京にいるのだという高揚感と、歩き疲れと、お日様の見える公園の暖かさとが、何とも言えないほっとした気持ちにさせてくれていましたし、美味しく食べられました。握り飯というのは、何とも言えない安寧を与えてくれるものだと、食べる度に感じます。鞄の中にこれが入っていますと、なんだか出かけるという気分を更にふつふつと沸かせてくれるといいますか、包みを開いたときに感じる開放感といいますか、そこいらへんがなんとも幸せに感じられるのです。

鳩と塩むすび  公園には、鳩がたくさん住んでいました。きっとお昼時には、人々の食べるお弁当のおこぼれにあずかることもあるのでしょう。鳩にとっても、暖かくて、木もあって、これは、僕と同じように、ビルの間で電線にとまっているときよりも、ほっとしているのではないかなあなどと考えました。

 お昼御飯を済ませた僕は、再び、古本屋巡りを再開しました。徹夜明けでしたから、ちょっとばかり眠くて歩くのが億劫でしたけれど、午前中は一冊しか見つかっていません。

●やっぱり、疲れました

古本屋  午後の散策を始めました。午後は、興味を抱くような本がたくさん見つかりました。「貧乏研究」なんて書籍は、僕の心をたいへんに動かしたのですけれど、7,000円という値札が、僕と「貧乏研究」との間に立ちはだかったのです。内容としては、貧乏線による第一級、第二級というようなものでしたから、既に持っている本と似ているということで、なんとか自分を納得させたものです。

石下では、かえって見かけない  この頃になりますと、背文字を読むこともなかなか難しいほどに疲れていました。15時を回った頃、最後にしようと思って入った店でも、なんだかぼうっとしていました。けれど、ここで、探していた本が唐突に目に飛び込んできたのです。突然の出来事でしたから、なんだか嘘のようにも感じられましたけれど、手にとって見ますと、確かに探していた本でした。昔、知人から借りていた小さな翻訳物の辞典なのですけれど、昔の本で、地元では見つからずにいたものです。500円でしたが、迷わずに買うことにいたしました。そのお店では、もうひとつ、岩波文庫で読みたいと思っていたものが全十巻1,500円でしたから、まあ、一冊150円ならよろしいかと感じて購入しました。

 これで、神田神保町を後に、秋葉原まで歩いて戻り、列車で帰るだけとなりましたが、思ったよりも買い物が少なかったですから、最初の店で見つけた辞書を買って帰ることにいたしました。本は、2,700円分を買ったことになります。

●東京は凄かったです

ホームにて こうして、東京への小さな旅は終わりました。帰り道、まつやに入っていく人たちを羨ましく思いながら、秋葉原で電車に乗り、上野の常磐線ホームに着いたときには、すっかりと疲れてしまって、座りたいと思いました。でも、ホームには椅子がひとつもないとわかり、なんだかぐったりとして立ちつくしていました。
 どうやら、東京の駅はすぐに電車が入ってきますから、ホームには椅子など無くても間もなく座れることにはなりました。座った途端に眠り込んでしまい、気がついたときには取手にいました。朝には十分に凄いなあと感じました取手の街にも、東京から戻ったばかりの僕には、なんだか、帰りつつあるという安心を感じました。

買った本  今回の出費で一番大きいのは、交通費でした。3,320円というのは、毎月八万円とか九万円のアルバイト代で生活している僕からすれば、大きな出費です。東京へは滅多に行けませんから、上野のカメラ店だとか、銀座のギャラリーだとか、そういった所も行きたかったのですけれど、一日では難しいです。

 今度は、お金が貯まったら、一泊二日くらいで行ってみたいとは思います。それがいつになるかは、ちょっと今はわかりません。


連載記事
これ、もらいました(感涙)
記憶その1 2月の貰い物
 読者のとりあたま様より、日本全国うまいものめぐりをいただきました!!

うまいものめぐり 日本酒の友

 「北海道から九州まで、各地の銘産素材をじっくり煮込んだふるさとの心のかよった味のつめ合わせです。」と書かれた箱を開くと、そこには日本各地の旨いが詰まった瓶が。一目見ただけで、これはもう、日本酒にも御飯にも嬉しいに決まっていると感じさせる味が広がっているのです。秋田・きゃらぶき南部・山海ぶし伊勢・磯のり肥前・赤貝日向・しいたけ志摩・あらめ信州・雪の下三陸・茎わかめという顔ぶれが、私の酒呑みたい心を震わせます。せっかくのいただきものですし、なにせ相手は日本各地ときたもんですから、私も乏しい金をかき集めて日本酒を用意。迎撃体制なのであります。

 さて、酒の準備を整えてから、まずは肥前の赤貝をうりゃっと開けてみたのです。一粒を口に含んだ途端に、甘辛く煮込まれた赤貝の風味が心地よく響くではないですか。これを酒で流し込むことにより、眼前には佐賀の海が広がってしまうのです。赤貝に寄り添う生姜も影ながら立派にアクセントをつけていて、日本酒をくっと流すと頬を緩めずには居られないのでありました。

 とりあたま様、「購読料代わり」という粋な計らいをありがとうございました。しばらくは、日本全国を転々と旅しながら酔いしれる日々が続きそうです。


このコーナーは、皆様からいただきものを頂戴したときだけの不定期連載です。いや、その、定期連載にできればこれほど嬉しいことはありませんので、お気軽にお問い合わせください。いやあ、なんだか図々しいですけれど、まあ、その。

貧乏彩時記 〜第7回:寒を楽しむREDの雪割り
1月20日
雪割り  関東平野が今年2度目の降雪を迎えた日の夜。私は、貧乏長屋の目前に広がる雪景色を前に、寒さのため停滞気味の思考が織りなす無益な想い、それはそれは想像に易しい、もはや常套句とも言える一言、喰えないかな、を口に出してみた。夏だったら美味しいかもしれない雪の結晶も、半纏姿でストーブの前にうずくまるような寒さの冬には迷惑そのものであり、雪が嬉しいなどといった発言は室内を十分に暖めてあまりあるほどの能力を備えた暖房器具を惜しみなく使える人が大きなガラス窓の外に広がる庭への積雪を、ナイトガウンの片手にはブランデーグラスといった趣で吐く台詞である。ブランデー……私の思考が、やがて視線となって部屋の片隅を射抜く。そこでは、残り少ないREDの瓶が面白くもないといった表情を浮かべて鎮座していた。面白くもない表情を瓶が浮かべるはずもなく、それは、私自身の顔が瓶へと投影された結果だったのかもしれない。
 雪なんて、くったって腹が膨れるわけではない。なら、いっそ寒さを楽しめばよいのだ。私はわずかばかりの庭に積もった雪を素手でギュッと握って雪玉を作り、グラスに放り込んだ。両手にはキリッとした痛みを伴ったジワジワ感が残っていたが、かまわずにREDの瓶をぐいっと掴みあげて中身を全てグラスへと乱暴に、かといってこぼさないくらいの丁寧さは残しつつ移してしまった。グラスが寒さに凍えるかのように、表面の水滴が一気に凍りつく。これだけでは寂しかろうと、冷蔵庫の中に残っていた練り物を軽くあぶってみた。最初はほかほかと暖かそうに湯気など上気させていた練り物も、雪の積もる縁側に並べられてしまってはたちまちに冷めてしまった。全てが寒い。REDを一口、ぐびりと呑む。寒さが食道を伝わってくる。
 そのまま、降雪を眺めつつ本でも読んでやろうかとも考えたが、どうにも寒くて長くはもたなかった。窓を閉め、ストーブに火を入れる頃には、グラスの中の雪玉も解けはじめていた。薬缶がググッと唸るストーブを抱えるように、雪割りREDの夜は続くこととなった。本の内容は、アルコールの酔いほどは染み込んでこなかった。

投稿記事
貧評会

タイトル
寮を出て茨城に引っ越してきてアパート暮らし1年ぐらいですがバイクやNotePCを購入しても急須や電気ポットを購入するのを躊躇して踏みとどまってます。
生活必需品を差し置いて、嗜好品を買ってしまって貧しい生活をおくるのはなんと言うか馬鹿ですね。
この耐乏PressJapan.を読んで考えを改めようと思ったりしてます。

投稿:おおなみ


貧乏料理

読者版・小麦粉、大好き!
結婚しているのに月収数千円(!)という、どうしようもないまりぞう家の小麦粉料理をご紹介させていただきます。

餃子の皮

<材料(1人分)>小麦粉100g 水50cc 塩少々

 小麦粉と塩を混ぜ、そこに水を加え、混ぜます。ベタベタしているのがだんだんまとまってきますので、ひとかたまりになったら、打ち粉をしたまな板などでよくこねます。生地はかなり固めですが、頑張ってください。よく練ったら、ビニール袋などに入れて30分〜1時間ほど寝かせます。
 寝かせたものを、親指の先より少し大きめくらいにちぎり、打ち粉をしながら麺棒などで丸く延ばします。麺打ちの時と同様、打ち粉をたっぷりして下さいね。それに、挽肉・韮・キャベツ・にんにく・調味料などを合わせた具を包みます。包んだら、茹でてください。ゆでると一回り大きくなって、得した気分になります。ラー油、醤油、酢などをつけていただきます。あれば、タレにみじん切りの長ねぎを加えると美味しいです。
 これは水餃子用のレシピですが、焼いても美味しいです。何より、市販の皮より安く、歯ごたえがもっちりしていて、主食も兼ねるのが、貧乏人には嬉しいところです。本当は強力粉を半分強入れるらしいのですが、薄力粉でも十分もちもちです。2人分くらいが作りやすい分量だと思います。薄切り玉ねぎとチーズをのっけてオーブンで焼けば、かなりあっさりしてはいますが、ピザです。
 別バージョンとして、水の半量をたまごに変えたら、ワンタンっぽい皮が出来ました、それを刻んだら、ラーメンもどきになりました(^^;会長のお知恵が、うちの貧しい台所で役立っております。

葛湯
 食料が乏しくなると、だんなのいない昼ご飯などは、片栗粉を水で溶いたものを火にかけ、塩やだしの素で味付けをして食べます。片栗粉は小麦粉よりもよく固まりますので、少ない粉で大量の水を固める事が出来、より満足感を得る事が出来ます。牛乳を入れる余裕があれば、水と牛乳を半々くらいにします。牛乳とだしの素って、意外に合うんです。
ナン
 強力粉やバターなどといった、高級食材も必要とするレシピですが、一応パンっぽいものもあると、特集が華やぐかと思いまして。バターの代わりに、サラダオイルでもいいかなあ?

<材料(6枚分)>
強力粉200g、薄力粉130g、ベーキングパウダー(近所のスーパーで100円くらいでした)大さじ1と小さじ1弱、卵1個、塩小さじ1/2、牛乳180cc、バター15g

 ボウルに溶き卵、牛乳、塩を加えて混ぜます。さらに粉類(ベーキングパウダーも)をあわせてふるい入れ、へら(無ければしゃもじ)でさっくりと混ぜます。溶かしバターを加え、全体がまとまるまで混ぜます。次に生地を台に移して手でよくこねます。表面がしっとりしてきたらひとまとめにし、ラップに包んで15分ほど休ませます。生地を6等分して丸め、麺棒などで約5ミリの厚さに、ナンっぽくのばします。それをフライパンで両面、弱火で焼いたら出来上がりです。
 餃子の皮より楽ですし、普通にパンを買うよりはお徳です。焼いたものを冷凍保存しておいて、飢餓状態の時にあっためて食べるのもいいかもしれませんね。

中華まん
<材料(8個ぶん)>
薄力粉270g 砂糖大1と1/2 ごま油大2/3 ぬるま湯(約40℃)150cc
ドライイースト6g(小匙2) 塩小1/4強

<用意しておくもの>

  • 強力粉(なければ薄力粉)、ごま油・・・適宜(発酵確認用)
  • 発酵用の湯(約50℃、風呂の湯より少し熱い程度)・・・適宜
  • オーブン用シート(7cm角に切る)・・・8枚(これは中華まんを載せて蒸すためのものですから、何でも代用できそうです)
  1. 薄力粉・砂糖・塩は合わせてふるい、ボールに入れる。
    ドライイーストを加えて混ぜ、ごま油とぬるま湯(約40℃、風呂の湯と同程度)をあわせたものを一気に注ぐ。
  2. ボールの中でまとめるようにしながら手でこねる。
  3. 生地がひとまとまりになったら、まな板に載せて5〜10分しっかりこねる。
  4. 生地を丸くまとめてごま油を薄く塗ったボールに入れ、生地の表面にも薄くごま油を塗る。発酵用の湯を入れた大きいボールに生地を入れたボールを浮かせ、大きいボールごとラップをかけ、30分ほど置く。生地が2倍くらいの大きさになったら、人差し指に発酵確認用の粉を少々つけ、生地にその指をぶすっと指す。そっと指を抜いてその穴がそのまま残ったら、発酵終了。穴が縮むようであれば、更に5〜10分おく。
  5. 発酵が終ったら、生地をまな板にのせ、両手で押さえてガス抜きをする。
  6. 8等分にわけ、丸める。分けたものは乾燥しないよう、ラップにくるむ。
  7. 具をつつむ。底のほうが厚くなるようにする。
  8. 蒸し器の準備。蒸気が上がってきたら1度火を止め、間隔をあけてならべる。(2倍に膨らんでも、くっつかない程度)
  9. 火を止めたままふたをして5〜10分、生地が約2倍にふくらみ、触って柔らかく、少しあたたかくなっていたら、また蓋をして強火にかけ、15〜20分蒸す。
書いていて思いましたが、かなり面倒くさそうですね。
80円の肉まんを買ってきたほうが早いか!?とも思うのですが、計算してみるとやはりこちらの方がダンゼン安く上がります。
何しろ小麦粉は、強い味方ですからね!

※中身もレシピがありましたが、全日本貧乏協議会会員たるもの、そのときあるものを詰めるのが鉄則かと思い、割愛しました(笑)。

※具を包まず、平たく延ばして蒸せば中華パン、いろいろな具を挟んで食べることができます。また、1度蒸したものは冷凍保存がききます。食べる時は凍ったまま10分蒸すか、レンジでチンします。

投稿:まりぞう


読者の声

このHP いつも楽しみにしています。
ところで、冒頭の「人生の落語者」、正しくは「落伍者」ではないのでしょうか?
それとも長屋で貧しいながらも愉快に暮らす熊さん、八っさんにかけた「落語者」が正しいのか?

投稿:シゲくん並の揚足取り男 どさんこ

おっちょこちょいなものですから、ページの各所に誤字脱字が存在する可能性は十分にありますけれど、さすがに初っぱなから誤字があるほどのおっちょこちょいではありません。

ご想像の通り、なめくじ長屋とかけているわけでして、そういったニヤリとできる部分はやはり各所にちりばめていたりもします。

怪鳥

一月号の特集「小麦粉、大好き!」は大変役に立ちました。月々の支払いが厳しいもので、食費を削らなければいけないので・・・。

近所の激安スーパーで食材を買い込み、一週間分のカレー(にホールトマトとコンソメスープを加えてスープ状にしたもの)を作って、ここにすいとん玉を落としこんで一週間楽しみました。

実家でお袋がよくすいとんを作ってくれたのを思い出しました。

ほかの食材での特集はしないんですか?

投稿:かつ。

食費って、一番削りやすい費用ですけれど、そのなかで工夫すればニンマリするような料理もできますよね。自分の手間を惜しまなければ、他人の手間にお金を使わずに済みますし。今月のまりぞうさんの投稿も、ぜひ役立ててください。

今後も、もちろん小麦粉だけでなく、さまざまな食材・料理を取り上げていくはずです。なにを取り上げるかは、まだ秘密です。(何も思いついていないという話も……)

お楽しみに!

快調


編集後記/次号のお知らせ
編集後記
2月下旬、ようやく春の足音が聞こえてきました。枯れ草の中に、イヌノフグリが咲いています。早いところ、冬には退場していただき、喰える草が勝手に生えてくる春を迎え入れたいものです。なにせ、寒くなければ灯油も必要なくなるのですから。さて、そんななか真冬の東京へと行って来たわけですが、今月の特集はいかがでしたか。都会の公園で食べる塩むすびも、なかなかのものでした。それにしても、東京へ行くのには列車代がかかり過ぎます。またしばらくは、近隣の古本屋巡りが続きそうです。(か)
次号のお知らせ
耐乏Press Japan. 2001年特小 3月上旬発刊予定

特集

  未定

  投稿記事

耐乏PressJapan.では、皆様からの投稿をお待ちしております。詳しくはトップページをご覧ください。

>>インデックスに戻る

耐乏Press 耐乏Press Japan. 発行:全日本貧乏協議会(taku3@jh.net) 発行部数:16992 冊
COPYRIGHT (c) 2001 Takuya Kawakami. ALL RIGHTS RESERVED.