
粉が生み出す豊かな食生活
今月の特集では、身近な食材である小麦粉を徹底研究。世界の粉食文化を取り入れることで、貧乏人の食卓もそれなりに彩られます。全レシピを写真で紹介!
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小麦粉が秘める可能性
あなたの台所の片隅。ポットに入っていたり、袋のまま無造作に置いてあったりする小麦粉。今月の特集では、この小麦粉で色々と作ってみます。小麦粉で作ることのできるものって、あらためて思い出してみるとたくさんあるのでびっくりします。ちょっと考えただけでも、これだけ出てきました。
うどん すいとん ラーメン
スパゲティ お好み焼き たこ焼き
てんぷら からあげ パン
ホットケーキ クッキー マドレーヌ
中華まん ぎょうざ シューマイ
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小麦は1万年前に人類が最初に栽培した農作物とされていて、世界中で栽培され食べられています。それだけに、調べれば調べるほどに色々な料理が出てきます。お米を炊くのが面倒なとき、米を切らしてしまったとき、甘い物が食べたいとき、深夜テレビでラーメン特集を観てしまったとき、小麦粉が私たちを救ってくれます。
では、小麦粉を使ってお手軽クッキングをはじめましょう。
冬のあったかメニュー
空腹を抱えての帰宅。早く何か食べたいけれど、お米を炊くのが面倒だったり、お米を切らしてしまっているときに便利なのは小麦粉。冬の寒い時季、冷蔵庫の余り物で作ることができるあったかメニューが、すいとんです。
すいとんというと、小麦粉を水で溶いたものを味付けした汁の中へ落とすだけというお手軽メニューですが、敗戦後の物のない時代の象徴という捉え方が一般的のようです。終戦記念日には、戦争を二度と繰り返さないようにとの願いをこめてすいとんを食べますが、貧乏人は終戦記念日に限らず頻繁に願っていることと思います。
お湯を沸かし、その間に小麦粉を水で練る。お湯が沸いたら冷蔵庫の余り物をぐわっと入れてしまい、みりん、酒、塩、しょうゆなど、手元にある調味料で味付けし、小麦粉をスプーンをふたつ使ってくるっと丸めて入れる。実に簡単です。小麦粉を緩めに溶いて、穴あきおたまで流し込むこともできます。15分もあれば、あつあつをふうふうしながら暖まることができます。
しかしながら、「またすいとんかよ、この貧乏人が」などと言われることもあります。そう言う人に限って、コンビニの弁当を食べながらちまちまと車のローン返済に縛られて暮らしているのですけれど、まあ、ここで怒るのも勿体ない話ですから、「ひっつみはご存じですか」などと静かに、心穏やかに装って言い返しましょう。
東北地方、青森とか岩手の辺りでは、すいとんが郷土料理として受け継がれています。現地では、
「ひっつみ」とか「とってなげ」などと呼ばれているそうですが、紛れもないすいとんです。実際のレシピをご紹介します。
東北の郷土料理
ひっつみの作り方
1.ボールに卵1個、サラダ油少々を入れて混ぜる
泡立て器でちゃちゃっとやるとよろしいようです。卵がなければ、かわりに水50ccで代用します。乾燥防止のサラダ油は、すぐに茹でるのであれば必要ありません。
2.小麦粉100グラムに1.の卵液を静かに流し入れて右手で混ぜる
左手でもかまいませんが、必ず片方の手だけでこねましょう。最初はべちゃべちゃと指にくっつきますが、気にせずにこねていると、乾いてぽろぽろしてきます。そこまでこねれば、両手をゴシゴシするだけで生地が簡単にはがれるようになります。
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3.だし汁にニンジン、ゴボウ、大根などを入れて煮る
だしは、なんでもかまいません。かつおでも昆布でも、焼いて干した川魚とか、鶏肉でもよいでしょう。季節の野菜を入れて楽しみましょう。
4.3.が煮立ったら、2.の生地をちぎって薄くのばして入れる
大きさは、まあ、お好みで。
5.生地が煮えたら、しょうゆで味を調えて完成
刻んだネギ、ゆず、七色唐辛子なんかあると立派に見えます。ああ、みつばなんて最高ですね。
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いかがでしょう。すいとんと言ってしまうと威厳も風格もいま一歩の料理が、「東北の郷土料理、ひっつみです」などと言うだけで、なんだかこいつは少しやるなあ、という感じでちょっと背筋が伸びてしまいます。不意の来客にも対応できる立派なすいとんではないでしょうか。
■郷土料理『ひっつみ』
東北地方、主に岩手辺りの郷土料理として受け継がれているひっつみは、水でこねた小麦粉をひっつまんで(つまんで)鍋にいれることから「ひっつみ」と呼ばれるようになったとのことです。その他にも「はっとう」「はっと」「つめり」「とってなげ」などとも呼ばれているようで、昔の米が貴重だった頃に米を節約するために一日一食は必ず、このような小麦粉を使った料理を主食として食べていたと言われています。
いろいろな材料で調理するバランスの良い料理で、ごちそうとして食べられていたそうです。カボチャ汁や小豆汁に入れた、カボチャひっつみや小豆ひっつみなど、バリエーションも豊か。料理を題材にした漫画でも紹介されています。
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麺とパスタ
テレビジョン放送の常套手段、ラーメン特集。夜中にこんなものを観てしまうと、ラーメンが食べたくなってしまいます。ふと、うどんが食べたくなったりもします。スパゲティーなんてのも、料理雑誌には頻繁に登場します。これら麺やパスタを食べたいという欲望すらも、小麦粉は叶えてくれます。
美味しいうどんやパスタを打ちたいからといって、それぞれ修行するわけにもいきません。できるだけ、おなじ行程でさまざまな麺・パスタ料理を作ることができたら嬉しいですね。じゃあ、おなじにしてしまいましょう。
ラーメン・うどん・パスタ共通
麺の打ち方
1.ボールにふるった小麦粉100グラム、塩ひとつまみ、卵(Mサイズ)1個を入れる
小麦粉は、普通のざるでふるうだけでも十分です。ボールは、ドンブリでもかまいません。卵が1パック100円以上だった場合は、かわりに水50ccを加えてください。なあに、味が変わるだけです。食感も変わりますが。いや、気にしてはいけません。
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2.右手でこねる
左手でもかまいませんが、必ず片方の手だけでこねましょう。最初はべちゃべちゃと指にくっつきますが、気にせずにこねていると、乾いてぽろぽろしてきます。そこまでこねれば、両手をゴシゴシするだけで生地が簡単にはがれるようになります。
3.生地を丸め、グッ!と握りながら両手を行き来させる
右手と左手で、軽くキャッチボールをするような感覚で行ってください。
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4.板の上で生地を薄くのばす
打ち粉(小麦粉)を振った板に生地をのせ、やはり小麦粉をまぶした丸い棒でのばしていきます。ラーメン、パスタであれば、1ミリ未満にのばせれば最高です。まな板のような狭い板でも、小分けにのばせば大丈夫。棒がなければ、ラップの芯やガラスのコップなど、手頃な物を探してみてください。写真の生地は、直径6ミリのステンレス棒でのばしました。
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5.生地を折り畳んで切る
のばした生地に打ち粉(小麦粉)を振って折り畳み、包丁で好みの幅に切ります。ここで、ラーメン、うどん、パスタの区別が生まれます。4.で1ミリ未満にのばすことができていれば、8つ折りに畳んで文化包丁で楽に切ることができます。包丁は、真下に落とす感じで生地を裁つようにしましょう。
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6.生地をまとめて完成
切ったままにしておくと、すぐにくっついてしまいます。打ち粉(小麦粉)を振り、麺を軽く丸めます。丸めたあと、ギュッと握ってバンっ!とまな板に打ち付けると、ちぢれ麺風になります。打ち付けた後にも打ち粉(小麦粉)を振ってまとめておきましょう。
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3種類の麺をほとんどおなじ行程で打つというのも多少無理があるのかもしれません。カンスイも重曹も使いませんし、パスタなんてのは粉が違ったりもします。小麦粉といったって薄力粉・中力粉・強力粉という分類もあるわけです。けれど、そんなことは心の片隅に追いやってしまいましょう。一番安く入手できる薄力粉で十分です。それに、ご紹介した方法でもそれなりの麺・パスタにはなります。個々の好みはあるかもしれませんが、既製の乾麺より美味しいと感じるのではないでしょうか。
打ったその場で茹でて食べる生パスタなんてのは最高です。そこいらへんの洋食屋の生パスタなんか、食べる必要を感じなくなります。調理方法は、お好きな方法でかまわないわけですけれど、おすすめはたっぷりのバターとたっぷりの塩だけのシンプルなもの。フライパンでちょちょっとからめるだけです。
■生地の基本
ここまでお読みになって、なにか気がついたあなた。そう、ひっつみも、麺・パスタも、生地の作り方がほとんどいっしょです。粉文化に国境無しとはよく言ったものです。今回のレシピでは、贅沢に卵を連発していますが、卵(Mサイズ)1個は水50ccと置き換えることができます。できれば、卵でやっていただきたいと考える次第ではありますが。
ひっつみのサラダ油というのは、生地が乾燥するのを防ぐためのものです。これは、麺・パスタに
使っても一向にかまわないわけです。ラーメンなら胡麻油、パスタならオリーブオイルを加えることで、よりそれらしくなります。
ひっつみも、鶏でとったスープで中華風に仕上げるなら、生地には胡麻油を混ぜることでより中華らしくなります。生地をひっつんで薄くのばし、ストーブで軽くあぶって焦げ目をつけてから煮込むと、また違った感動に出会えるでしょう。
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簡単に焼ける小麦粉
小麦粉料理で忘れてはいけないのが、お好み焼き。お好みの食材を生地にぐわっと混ぜて焼くだけのお手軽料理です。なんとか風などとこじゃれたものが幅を利かせていたりもしますが、貧乏人には生地に野菜くずを混ぜて焼くのが精一杯。そんなお好み焼きも、やはりネーミングひとつで郷土料理に早変わりします。
日本一の長寿国、ほぼ常夏の国、邦画なのに字幕スーパー付きの映画パイナップルツアーズの撮影地、琉球沖縄には「ひらやーち」という料理があります。具は1種類だけでも、小麦粉を美味しく食べることができます。
琉球沖縄料理
ひらやーちの作り方
1.小麦粉と水で、お好み焼きよりも若干ゆるい生地を作る
お好み焼きともんじゃ焼きの中間くらいでしょうか。中力粉が適しているらしいとの噂です。
2.生地に、2センチくらいに切ったチリビラ(ニラ)を入れる
ニラがなかったら、ネギを入れて胡麻油をきかせ、「ちぢみ」だと言い張るのも素敵です。
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3.熱したフライパンにサラダ油をひき、焼く
薄く焼きます。6〜7割ぐらい火が通った頃に裏返します。すぐに火が通るので、注意してください。
4.焼き上がったら皿にとり、ウスターソースをかける
ウスターソースとの相性が抜群です。
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簡単に沖縄の気分を味わえるひらやーちは、野外調理にも適しています。食べられる野草で試してみましょう。
■小麦粉の保管
小麦粉は、立派な乾物です。乾物である小麦粉は、湿気を嫌います。乾物ですから、風通しの良い、涼しい乾燥した場所に保管すれば、賞味期限などはあまり考慮する必要はないでしょう。カビ、虫にはご注意ください。
また、小麦粉は臭いを吸ってしまう性質がありますので、開封したまま置いておくのではなく、容器などに密封して保管するように心がけましょう。女性の方は、香水や化粧品などの香りも移ってしまいますので注意が必要です。
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おやつだって小麦粉
貧乏生活などしておりますと、甘い物が食べたくなることがあります。お菓子を食べるという習慣の無い貧乏人は、どうしても糖分が不足しがち。小麦粉があれば、簡単おやつで糖分補給ができます。
オーブンを持っている人などは、さまざまなお菓子作りにチャレンジしているはずですが、貧乏人がオーブンを持っている確率というのも低いと思われます。フライパンで気軽にできるおやつといえば、ホットケーキではないでしょうか。
簡単おやつ
ホットケーキ
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1.ボールに小麦粉100グラムとベーキングパウダー3グラムをふるう
普通のざるでふるうだけでも十分です。ボールは、ドンブリでもかまいません。ベーキングパウダーが無い場合、この際は入れずにいきましょう。なあに、膨らまないだけです。
2.砂糖適量、牛乳100cc、卵Mサイズ1個を入れて混ぜる
砂糖は、糖分補給が目的ですからこの際は大量に入れましょう。牛乳が無ければ、まあ、水を100ccで代用しましょう。卵が買えない場合は、牛乳または水50ccを増やしてください。脱脂乳でもよいでしょう。
3.フライパンでバターを溶かし、生地を焼く
バターがなければ、マーガリン。マーガリンがなければサラダ油で代用します。焼ければいいでしょう。
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4.シロップをかけて完成
蜂蜜なんて贅沢は言いません。砂糖水を鍋で火にかけ、色が変わる寸前くらいのあつあつをかけましょう。なんともいえない風味があり、これはこれで楽しめます。余裕があるならバターもトッピングしてしまいましょう。子供の頃に夢見たホットケーキに近づきます。時には思い切りが必要です。
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ホットケーキ用の生地は、ベーキングパウダーを入れなければクレープの生地に変身。この場合、牛乳を多めにして薄くのばして焼きましょう。砂糖を使わずに焼けば、応用もききます。薄く焼いた物をラップにくるんで冷凍しておくこともできます。オーブンを持っている人は、冷凍生地を解凍してパイ生地として使えるような気がします。
マドレーヌくらいだったら、薄いものならオーブントースターで焼けます。この場合の生地は、小麦粉と砂糖と卵を同量、バターを1.2倍、それにバニラエッセンスなんてあるとらしくなりますね。
■ホットケーキミックス
ホットケーキミックスと小麦粉を比べた場合、ホットケーキやドーナツなどをより少ない手間で焼くならホットケーキミックスの方が優れているかも知れません。ただ、ホットケーキミックスは粉として考えた場合は用途も限られるし、割高であると言えるかもしれません。
ここで考慮すべきなのは、特売のホットケーキミックス。ホットケーキやお菓子作りを考えるなら、小麦粉と同等の価格で売り出されている特売ホットケーキミックスは小麦粉よりも割安と言えるのではないかという考えもあります。ただし、特売ホットケーキミックスそのままでホットケーキを焼くと、いまいちであることもあります。
なにか手を加える目的があり、それには特売ホットケーキミックスが適していると思われる場合は、これを利用する方が良いでしょう。ただし、ストックとしての粉を考えるならば、小麦粉の汎用性はホットケーキミックスを凌駕するでしょう。
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粉食文化を取り入れ豊かな食生活
まだまだ、小麦粉を利用した料理は数多くあります。今回の特集では、蒸し料理と揚げ料理は紙面の都合で取り上げられませんでしたが、煮る、焼くのふたつだけでも、世界は広がります。
日本の食文化は、粒食でした。小麦も、最初は重湯として食べていたようです。そばですら、そば粉にして打つようになるのは江戸時代に入ってからと言われていますから、穀物を粉にしてから加工するという粉食文化は、日本では新しい食文化と言えるのではないでしょうか。
粉の概念は、昔から日本にも伝わってきていました。室町時代には禅僧がうどんを食べていたらしいですし、ポルトガルからは宣教師がカステラをもたらしました。ですが、粉文化は一部の人々のものであり、庶民が日常に取り入れるようになったのは、それからずっと後のこと。やはり、粉食は日本では新しい食文化なのです。
世界中の多くの国が、主食に粉を用いています。貧乏人の食卓に粉食文化を取り入れることで、海外の食文化を体験できるのですから、これは大いに取り入れ、より豊かな貧乏生活を満喫しましょう。いくら米が優れているとはいえ、世の中に氾濫する無駄な情報の洪水にさらされていると、そういったものを食べたくなってしまうものです。だからといって、素直にそれを買ってきてしまったら、お金がかかってしまうではありませんか。
今回は、限られた紙面で紹介できなかった蒸し料理と揚げ料理。中華料理における粉利用法を取り入れられれば、小麦粉の世界はさらに広がるでしょうし、天ぷらはなんでも美味しく食べられてしまう料理法です。小麦粉をストックしておくことで広がる食の世界。米という粒食文化とともに、貧乏生活を生き抜く術にしましょう。