

缶詰に「もっと光を」
冷蔵庫不要の保存食といえば、昔は乾物でした。芋、大根といった根菜。米、大豆などの穀物。鰹、鯣などの魚。乾物のバリエーションも豊富ですから、調理の組み合わせで冷蔵庫のない生活を送っていたのです。しかしながら、これら乾物というのが、現代の生活では縁遠いものになりつつある。あなたの町に、乾物屋が残っているでしょうか。鰹節といえば、パックに入った削られたものを思い浮かべるでしょう。鰹節の塊なんて、今では高級なイメージしかありません。乾物は、確実に貧乏とは理解し合えない場所に行ってしまったのです。
気候の変化も、乾物を不利な立場に追いやっています。昔に比べ、今の日本は気温・湿度共に高くなっています。現代の密閉型建築も、食品を常温保存することを厳しくしています。常温保存できる食品といえば、インスタント・レトルト食品が最初に挙げられるという屈辱的な時代なのです。
これではいけない。なにがいけないのかわからないけれど、とにかくいけない。そこで、今月の特集。現代人が忘れかけていた素敵な保存食、缶詰に光を当ててみようではありませんか。乾物ならぬ、缶物。今月は缶詰に「もっと光を」。
魅惑の保存食、缶詰
缶詰ってのは、なかなかにしてすばらしかったりします。常温保存可能です。頑丈です。なにしろ、缶切りでごりごりと開けなければならないところが素敵です。缶詰に缶切りをあてるときのあの胸騒ぎは、なんとなくいい気持ちです。新しいパンツをおろすときの気持ちに似ています。缶詰を開けようって時に、缶切りが見つからなかったりするいらいらも、缶詰ならではのいらいらです。
いざ缶切りでごりごりがちゃがちゃと開けにかかっても、次には「どこまで切ろうか」という問題にさしあたります。全部開けてしまっては、能がありません。なんだか薄皮1枚でつながっているぞという缶とふたの関係には、なかなか味わいがあるのです。
ところが最近、金具を起こしてぱっかんするだけで開いてしまうような軟弱な輩も居たりしますから、なんだか寂しくなります。ぱっかんには、感動がありません。長きにわたって食材を閉じこめていてくれた蓋に対する思いやりをかけながら、少しずつ切り開くという楽しみが皆無です。やっぱり、缶詰というのは、缶切りで開けたいものです。缶詰を開けるだけでも、そのプロセスにはドラマがあるのですから。
缶詰ってのは、味もなかなかのものです。たとえば、鯖の味噌煮。缶詰の鯖味噌の味を、家庭で再現しようとしたって、なかなかうまくいきません。そう、鯖缶の味は、一流料理店のシェフだって出すことができないのです。缶詰の魅力は、エイジングにあるのです。
缶に閉じこめられた鯖は、長い年月をかけて味噌の味が染み込んでいくのです。熟成されていくのです。缶詰の中で、鯖は歳をとっていくのです。これが、エイジング。一流料理店のシェフでさえ、缶詰のエイジングを再現するには缶詰を作るしかないのです。缶詰の味を望むので有れば、缶詰を食べる以外に方法がないのです。缶詰は、『男はつらいよ』でのタコ社長なのです。あの役を、パンチョ伊藤がやったところでなんの面白味もありません。缶詰って奴は、そういう奴なのです。
缶詰、その分類
一口に缶詰などと申しましても、色々あるわけです。そこで、当協議会的勝手気まま分類を作ってみましたのでご覧いただきましょう。
高級缶詰
ずわいがにフレーク
コーンビーフ
シーチキン
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素材系缶詰
ホールトマト
スイートコーン
ソーセージ
マッシュルーム
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おつまみ系缶詰
ぴり辛焼き
鯖の味噌煮
さんま蒲焼
いわし味付
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缶詰の
当協議会的
分類表
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おかず系缶詰
サバカレー
いかすみカレー
ロールキャベツ
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デザート系缶詰
杏仁フルーツ
みかん
黄桃
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このように、5分類になるわけです。これらを駆使して料理を開発すれば、冷蔵庫が無くても自炊ができるようになるでしょう。いつかは、冷蔵庫などという無粋な箱を家から追い出したいものです。
調味料・食材を考える
■ピリ辛焼き/馬肉、しょうゆ、砂糖、香辛料、でん粉、肉エキス、調味料(アミノ酸等)、増粘多糖類/固形量50g/内容総量75g/購入価格\88
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缶詰だけで飯を食ったのでは、コストがかかりすぎます。たとえば、ピリ辛焼き。固形量50gに対し、購入価格は88円。開けてすぐに食べられるとはいえ、肉という素材として考えた場合には、明らかに高くつきます。缶詰をベースにした食生活を送るにしても、これを補う食材と、調味料がなければ貧乏に拍車をかけるだけです。
無冷蔵庫生活にて、どんな食材がストックできるのか。まずは、乾物が挙げられます。このうち、安心して購入できるものとしては、海苔、ゴマ、乾燥ワカメ、鰹節削りなどでしょう。海苔は、なかなかの役者です。米を炊いて、塩で握って、海苔を巻けばいいだけです。いりゴマなんかをまぶすのも素敵です。おかかなんか入れるのもいいですね。乾燥ワカメは、湿気に注意すれば常温で長期保存できる優れた海の幸。みそ汁や、海草サラダが気軽に作れます。鰹節の塊が入手できたならば、言うことはありません。けれど、これが難しい。パックに小分けされているやつか、ジッパーの付いた花鰹にするかは使用目的で分けましょう。
野菜を見てみると、大根、人参、馬鈴薯、玉葱、長葱などは、常温で保存できます。根菜を長期保存するには、泥付きのものを購入することが望ましいのです。これを、直射日光の当たらない、涼しい場所に保存しておくと、わりと長持ちします。湿気の多い暖かい場所に放置すると、あっという間に駄目になってしまいますから、注意してください。
調味料は、冷蔵庫が無くても保存できるものが多いので安心です。砂糖、塩、胡椒などは、常温保存ですし、醤油や油も常温で大丈夫。味噌やソース、ケチャップも、冷暗所で有れば常温保存できてしまいます。普段使用する調味料は、無冷蔵庫生活であっても、問題なく保存できます。
どの食材も、直射日光をさけ、風通しのよい涼しい場所に保存することが重要です。今の季節、油断をするとすぐに駄目にしてしまいます。ガス臭いと思ったら、玉葱が腐っていた……なんて事の無いように(実話)。
安売り店で、1缶25円という値段に惹かれて購入してしまった猫缶が、手元にある。僕は、猫なんか飼っていない。もし、これを食べることができたなら。それが、購入の動機である。25円。
原材料には、肉類・ビタミン類・ミネラル類とある。すべて、類、なのだ。食べることに踏ん切りが付かない理由のひとつとして挙げられる。肉の類。「ヘルシーな鶏肉をふんだんに使い、猫が大好きなまぐろで風味付けしました」と、その缶には記載されている。しかし、鶏肉以外の肉は使われていないといったような記述は、何一つ無い。なんてったって、原材料は肉類。牛だって、豚だって、肉類だ。ネズミだって、肉類だ。ミミズは、果たして肉類になるのだろうか。とにかく、鶏肉はわかっているが、それ以外の肉の類が入っていないとは一言も書いてないのである。
原産国も、気になる要因だ。アメリカ。あの、アメリカだ。歯磨き粉みたいなミント味のチョコレートパイを平気で喰える奴らの国、アメリカだ。人間が食べてはいけないとは、記載されていない。しかし、原産国はアメリカ。日本で売られている、日本語で書かれた商品であるから、日本の法律に則って販売されているのだとは思うけれど、猫缶に関してのルールが、果たしてどこまでなのかは僕の知るところではない。人間が食べても大丈夫かどうかなんて、記載する必要は無いというルールだったら、書かないかもしれないと考えられる。
自分自身、これを喰うことに折り合いがつけられるかという問題も存在する。いくら安いからとはいえ、畜生の餌である。これを喰うことで、人間であることを放棄してしまうのではないかという恐怖も、若干ある。人間をやめるか、猫缶をやめるか……。目の前の猫缶、その缶に描かれた猫の絵は、僕を見つめている。その目は、猫缶を前に思い悩む僕をあざ笑っている目である。
これがもし、袋入りのドライフードだったら、例しにひとつ、かじってみることも可能であるかもしれない。これほど悩むというのも、缶詰のなせる技ではなかろうか。開けてみなければ、中身がわからない。缶詰の奥の深さが、25円の猫缶に姿を変え、僕を悩ませる。
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缶詰を調理するにあたって
缶詰をそのまま食べたのでは、割高です。戦地に赴いているわけではないのですから、貧乏人が缶詰を食す場合、容量を増やすと言うことが重要になります。サバカレーなら、カレー粉を使って2倍くらいにしたいものです。ちょっと水っぽくなりますが、喰えます。小麦粉とカレー粉でルーを作れば、水っぽさも解消されます。ちょっとの手間で、量を増やせるのです。
さんま蒲焼きなどは、半分を炊き込みご飯にし、半分を炒め物に混ぜるなんて方法が使えます。1缶で、2品。品数を増やすことも、必須のテクニックです。
缶詰の融合も、使えるテクニック。なんだかお祝い的な気分の日には、ずわいがにフレークとシーチキン、それに乾燥ワカメを水戻しして、サラダが作れます。こんな贅沢は、滅多にできないですが。
のばす。分ける。融合させる。乾物、根菜、調味料を駆使して、缶詰料理を創作していきましょう。
缶詰調理レシピ
缶詰を利用した、無冷蔵庫生活調理レシピをご紹介します。
すきやき
1.鍋に、醤油、酒、砂糖で作った汁を入れ、沸騰させる 2.肉大和煮1缶、葱、戻した葛きり、凍り豆腐を入れ、火が通るまで煮る 3.食べ終わったら、残った汁に水で溶いた小麦粉を、スプーンでうどんくらいの太さになるように回しながら入れ、煮て食べる
いきなり、すきやきなどという豪華な料理を持ってきました。不意の来客にも、缶詰を中心にした調理で、お客様をもてなすことができます。すきやきで酒を飲んだ後、うどん風のすいとんでおなかを満たしましょう。お酒は、お客様が持ってくることを期待。
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鰯のそぼろ
1.フライパンで、醤油とみりんを適当に煮る 2.汁を切った鰯缶(水煮、味噌煮、味付け、なんでも良い)をくずしてフライパンに入れ、汁が無くなるまで炒める
お弁当に便利です。チャーハンに混ぜて使うこともできます。1缶の半分をそぼろにし、もう半分をそのまま食べてもいいし、他の調理に使ってもいいでしょう。
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サバコーンクリームカレー
1.サバカレー、ロールキャベツ、水気を切ったスイートコーンを鍋に入れ、火を通す 2.汁が足りない場合、水とカレー粉を投入して、なんとかする
なかなかに食べがいがあります。味が気に入らない場合は、各種調味料を駆使して調整してみてください。
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さんまご飯
1.米を研いで水を入れ、その上にさんま蒲焼きを解したものをのせて炊く
簡単に炊き込みご飯になります。お好みで、酒と砂糖を入れて炊くのもいい感じです。
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これ以外にも、調理方法+缶詰+食材の組み合わせで、色々な料理が構築できるはずです。人数が多いときには、ホールトマトでトマトソースを作り、茹でたパスタにかけてやるだけでもごまかしが利くはずです。トマトソースなんて、玉葱が入っていればなんとかなるもんです。それと、砂糖の使い方が鍵。適当に甘ければ、うまいって思いますから。たとえば、コンビニの弁当。あれ、何でもかんでも甘いですけれど、「甘ければうまいって思うだろ」という図式から来ています。
缶物+乾物で、サバイバルな無冷蔵庫ライフを
今月は、缶詰にフォーカスしてみました。「冷蔵庫なしで自炊なんて……」などとお考えの方も、少しはやる気が出てきたのではないでしょうか。なんてったって、日本には『米』という、無敵の保存食があります。主食が、長期保存食材の代表選手なのですから、周りを保存食で固めて生活することは十分に可能なのです。
冷蔵庫がないからと、自炊をあきらめていた貴方。缶詰を駆使して、様々な料理を創作してみてはいかがでしょうか。
缶……じゃなくて、完