1950年、池田勇人蔵相は「日本人は皆同じものを食べているが、古来の習慣にもどって所得の多い者は米本位、所得の少ない者は麦本位というようにいたしたい」と12月7日の参議院法務委員会で発言しました。俗に言う「貧乏人は麦を食え」という発言として有名です。フランス革命は、マリーアントワネットの「あら、パンがないのならお菓子を食べればいいじゃないの」という発言が引き金を引いたと言われています。
どうも、貧乏人は主食を食べてはいけないという風潮が根ざしているのは、納得がいきません。貧乏人こそ、日本人なら米を喰わなければならないのです。そりゃ、米といったら貴重品であることは確かです。でも、日本人としての遺伝子には、米を喰うことで体の底から力がみなぎるような何かが刻まれているような気がしませんか。白い米とみそ汁を目の前にすると、なんだか安堵しませんか。
パワーなら肉の方が、なんて思うかも知れませんが、アメリカ人に比べ、日本人の腸は長いというデータがあります。農耕民族であるわれわれ日本人は、米からのエネルギーを有効に摂取できる体を持っているのです。持久力こそ、貧乏人に必要な力。今月は、米を喰い、長い腸でゆっくりと栄養を吸い込み、今日を明るく生きるために役立つ特集です。
米の入手については、各自あらゆる手段をつくしてください。これだけは、いくら全日本貧乏協議会でも書けません。なんとしてでも米を手に入れましょう。入手した米を炊く方法は、耐乏PressJapan.がばっちりお教えします。
なんといっても米を炊くなら鍋です。貧乏人には炊飯器なんて米を炊くだけの電化製品など不要。アウトドア経験のある貧乏人ならすでに実践しているはずですし、地方のお年寄りは今でも鍋で米を炊いているのです。昨日の夜に炊いた飯が、今日の朝食時にはコタツから出てくるのです。さすがにかまどのある家は少ないでしょうが、せめてガスコンロがあるのならば米くらいは電化製品に頼らず、鍋。
では、さっそく鍋で米を炊くレシピを大公開します。
■米の炊き方
- 米をとぐ
1回目は水で軽く洗い、ゴミを落とす。2回目、3回目でとぐ。3回でおしまい。水が濁らなくなるまでとぐと、貴重な栄養が失われる。貧乏人なら、とぐのは3回。
- 鍋に入れた米の量+αの水をはる
+αの水量は、米によって異なる。新米なら10%、それ以外なら20%の水量。
- 鍋にふたをして、強火、もしくは中火にかける
火加減はお好みで。ただ、どんなに弱くても中火まで。
- 吹きこぼれたら、5秒待ってから弱火にする
5秒待つのがこつ。
- 水がなくなるまで(15分ほど)弱火で煮る
弱火が重要。強いと焦げるし、とろ火では芯が残る場合がある。
- 水がなくなったら、3秒間だけ強火にしてから火をとめる
3秒間強火にすることで、鍋の中に水蒸気をため込む。これが、蒸らしで生きる。
- 10分間、蒸らす
鍋の中の熱や水分がしっかり米の中まで入り込み、ふっくらする。重要な行程。
- 鍋のふたを取り、しゃもじでまぜれば完成
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レシピ通りにやれば、まず失敗はないでしょう。最初のうちはおこげができたり、多少芯が残ってしまうかもしれません。けれど、鍋で炊くというプロセスを楽しむことで、お米をよりいっそう美味しくありがたく喰うことができるのです。おこげを自在にコントロールできるようになれば、レパートリーも広がります。おこげで作ったおにぎりに、お茶をずわっとかけてつくる茶漬けなんて、年齢が上の方なら喜びますよ。実は、中華料理ではおこげ料理がけっこう高級だったりしますし。
こうして炊いた米は、みそ汁だけでも実に旨く喰えます。米と味噌。日本人の琴線に触れるなにかを秘めた食を喰い、米の持久力と米から得る精神力を蓄えることで貧乏を明るく生きましょう。
一人暮らしだと、炊いた米を余らせてしまう場合もあるでしょう。残さずに喰ってしまうのもひとつの手ではありますが、無理をしては体に良くありませんし、胃袋が拡大してしまうとあとあとが大変です。これは、保存することにしましょう。
保存方法としてすぐに浮かぶのは冷蔵庫と冷凍庫。すぐに食べるとわかっているならば、冷蔵庫に保管しておき、チャーハンや雑炊にするか、焼きおにぎりにするか、電子レンジがあるならば温めて喰う。長期保存であれば冷凍してしまい、やはり雑炊にでもして喰う。でも、貴重な冷蔵庫・冷凍庫のスペースと電力をなるべく消費しないで保存できれば、貧乏人としてはありがたいですね。
そこで、耐乏PressJapan.が提案するのが、乾燥させてしまうこと。日本古来の保存方法、乾し飯です。
使用するエネルギーは、無限で無料の太陽光。まず、余った飯をざるにあけて水で洗います。これを新聞紙の上にでもざっと並べ、天日でからっからに干せば完成。実に簡単ですが、干すという行為の素晴らしさを実感できることでしょう。乾し飯は、湿気のないところで常温保存しておけます。カビが生えなければ食べることができるので、10年以上長持ちさせることもできるようです。
一度熱を加えてあるわけですから、インスタント食品的に使えるのも魅力。一番簡単なのは、写真のように雑炊にしてしまうこと。乾し飯が柔らかくなるまで煮れば、もう、飯に戻っています。普通の飯と比べても、遜色がありません。また、病気でダウンしたときなどは、乾し飯を布にでもくるんで堅いもので叩いて粉にします。これに、お湯を注げばすぐに口にできます。乾し飯を粉にした物を米粉といい、これは、一度加熱された米ですから、湯で溶くだけで喰えるのです。単に米を粉にした物はしん粉で、しん粉餅などはこちらで作りますが、加熱していないわけですから、蒸す必要があるのです。
乾し飯は、日本の貧乏人にとっては究極の保存食です。