今月の特集は、ハローワーク入門です。会社勤めに疲れた人、夢を求めて無職になりたい会社員、リストラされてしまった人に、失業保険のもらい方をお届けします。
■1■ 雇用保険の失業給付受給者
失業保険は、正式には雇用保険の失業給付という名前です。職安からもらうしおりには、「雇用保険は積立貯金ではなく、不幸にして失業した場合にのみ支給される」と記されています。
しかし、職業安定所があなたが不幸かどうかを判断することは不可能ですから、きちんと手続きをすればもらえますのでご安心ください。
ちなみに、失業給付金のほとんどが、他の労働者や事業者からの保険金や税金でまかなわれる相互扶助の制度ということです。
■2■ 受給資格
失業給付を受けるには、退職前に雇用保険に入っているかどうかを確認しましょう。給与明細に雇用保険の欄があり、毎月保険料が引かれているようならば大丈夫です。
つぎに、被保険者であった期間を確認します。「一般被保険者」および「高年齢継続被保険者」であるならば、賃金支払いの基礎となった日数14日以上の月が6ヶ月以上あり、かつ、雇用保険に加入していた時期が満6ヶ月以上あること、
「短時間被保険者」及び「高年齢短時間被保険者」の方は、賃金支払いの基礎となった日数11日以上の月が12ヶ月以上あり、かつ、雇用保険に加入していた期間が満12ヶ月以上あることが条件となります。
次に必要なのは、なによりもあなたが「失業」の状態にあることです。
職安では、「積極的に就職しようとする気持ち」と「いつでも就職できる能力(環境・健康状態)」があり、「積極的に就職活動を行っているにもかかわらず就職できない状態」でなければ認定してくれません。
しかし、気持ちや積極的かどうかを判断することは職安には不可能ですから、下記の場合の方以外はご安心ください。
- 失業給付を受けられない場合
- 病気やけがですぐに働けないとき
- 妊娠・出産・育児などによりすぐに働けないとき
- 親族の看護に専念し、すぐに働けないとき
- 定年などで退職してしばらく休養するとき
※上記4項目の方は、給付期間の延長制度を利用することができます。詳しくは、職安にお問い合わせください。
- 結婚をして家事に専念するとき
- 自営業(準備を含む。)をはじめたとき
- 新しい仕事についたとき(パート、アルバイトなども含む。)
- 会社の役員に就任したとき(事業活動及び収入の有無を問いません。)
これらの条件を満たしていれば、あなたは退職後に雇用保険の失業給付を受ける資格があります。さあ、あなたの会社の手続きに則って退職の手続きをとりましょう。
※2000.8.11 一般被保険者及び高年齢継続被保険者の期間について、間違っているとのご指摘をいただきましたので、訂正させていただきました。お詫び申し上げます。
■3■ 最初の手続き
さあ、晴れて無職になったあなたの手元には、会社から送られてきた「離職票-1及び離職票-2」と「雇用保険被保険者証」があるはずです。それを持って、あなたの住所を管轄する職安に行きましょう。職業安定所の窓口は、平日の9:00〜11:00、13:00〜16:00です。無職のあなたなら、問題なく職安を訪れることができますね。
職安へは、以下の物を持っていきましょう。
- 持って行くもの
- 離職票-1及び離職票-2
- 雇用(失業)保険被保険者証
- 印鑑
- 住民票又は運転免許証(その他住所及び年齢を確認できる官公所発行の書類)
- 写真1枚(3cm×2.5cm程度の正面上半身のもの)
職安に着いたら、「求職の申込み」という書類に記入し、受付に提出します。詳しいことは、職安の職員に聞いてくだされば一応、教えてくれます。
筆者の場合、この日に失業給付を振り込む金融機関の確認印・銀行コード・店舗コードを記載する書類をもらいました。あなたは、口座がある銀行に行ってこの書類に記入してもらわなければなりません。面倒ですが、無職のあなたなら時間はありますね。
■4■ 雇用保険説明会
すべての職安がそうなのかはわかりませんが、筆者の行った職安では後日、説明会がありました。職安通いセットが配られ、ビデオを見せられます。
不正受給についての説明がメインで、内緒でアルバイトをしたりすると絶対にばれ、不正に受給した保険金はすべて返さなければならないといった内容です。
実際は、支給される失業給付から働いた分が引かれて支給される程度のようですが、夢の失業保険生活のために辞められた皆さんですから、このようなことは無いと信じております。
職安通いセットには、「雇用保険受給資格者証」という大切なものが入っています。あなたの今後しばらくの生活を支えてくださる失業給付を受けるためのものですから、大切にしましょう。
■5■ 何日間、いくらもらえる?
給付の日数及び金額については、収入、働いた期間によって変わります。
あなたが受けられる失業給付を「基本手当」といいます。
基本手当の日額は、原則として離職日の直前6ヶ月間に受けられた賃金を180日で割った額(これを賃金日額といいます)のおよそ6割〜8割(60歳以上65歳未満の方は5割〜8割)になります。
なお、基本手当の日額には限界があり、年齢によって違います。この額は、毎年8月1日に変更になりますので詳しくはご自分でお調べいただきたいのですが、平成10年度の金額を掲載しておきます。
年齢区分 | 基本手当日額最高額 |
〜 29歳 | 8,830円 |
30歳 〜 44歳 | 9,810円 |
45歳 〜 59歳 | 10,790円 |
60歳 〜 64歳 | 9,810円 |
では、これを何日間給付してもらえるのでしょうか。下表をご覧ください。
↓離職時の年齢\被保険者であった期間→ |
1年 未満 |
5年以上 5未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年 以上 |
30歳未満 | 90日 |
90日 |
90日 |
180日 |
− |
30歳以上45歳未満 |
90日 |
180日 |
210日 |
210日 |
45歳以上60歳未満 |
180日 |
210日 |
240日 |
300日 |
60歳以上65歳未満 |
240日 |
300日 |
300日 |
300日 |
就職 困難者 |
45歳未満 |
240日 |
45歳以上65歳未満 |
300日 |
あなたの給付日数がわかりましたね。夢の失業保険生活を思い描きましょう。
■6■ いつからもらえるの?
この夢のような失業給付がもらえるのはいつからなのか。その前に、給付を受けられる期限をご説明します。
給付を受けることのできる期間は、離職日の翌日から1年となっています。この期間を過ぎますと、給付日数分の支給を受け終わっていなくても基本手当は支給されなくなります。ただし、給付日数が300日の方で、この後ご説明する3ヶ月の給付制限を受けた方は、「給付制限3ヶ月+21日+所定給付日数300日-1年」の分だけは1年間を越えて支給してもらえます。
いずれにせよ、会社を辞めたらすぐに職安で手続きをしましょう。
失業給付はいつから支給してもらえるかは、失業の理由によって異なります。まず、どんな理由であっても、職安で手続きを行った日(受給資格決定日)から、失業の状態にあった日が7日間経過してからでないと給付がはじまりません。これを「待機期間」といいます。
次の理由で離職された場合、待機期間が終わると3ヶ月間の給付制限があり、この期間は失業手当が支給されません。
- 給付制限が適用される方
- 正当な理由がなく、自分の都合で離職したとき
- 自分の責任による重大な理由により解雇されたとき
自己都合での退職や重大な問題を引き起こしてしまっての懲戒解雇だと、給付制限を受けます。給付制限の3ヶ月を退職金で乗り切りましょう。
給付制限のない方(会社都合での離職)は、7日間の待機期間が終わればすぐに支給がはじまります。
■7■ 失業認定日
職安では、給付制限期間も含めた給付期間中、あなたが失業の状態にあり、積極的に求職活動をしているかどうかを月に一度、確認したがります。
これを失業認定日といいます。認定日は各職安、各自違うと思われますので、職安からもらう書類を確認してください。
初回認定日、あなたは「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」を持って指定の時間に職安へ行きます。職安は、失業認定を待つ人々で混雑しています。早く済ませたい場合は一番乗りで行くくらいの気持ちが必要です。
失業認定申告書というのは、期間中に仕事をしたかとか、就職先を探したかとか、今仕事を紹介されたらすぐに応じられるかとか、就職の予定はあるかといったことを○で囲んで記入する用紙です。
一緒に記入のしかたを説明した紙が配られますので、心配はいりません。仕事はしていない。仕事は○○新聞の求人広告で探した。紹介されればすぐに応じられる。かならずそういうふうに記入しましょう。
認定自体は、この用紙を元に1分程度で済み、次回の認定日が印字された雇用保険受給資格者証が返却されて終わりになります。
なお、給付制限のある方は、給付制限期間中も毎月一回、認定日があります…が、筆者の場合、「あ〜、どうせ来てもやること(紹介できる仕事)ないから、3ヶ月後の認定日に来ればいいや」と言われました。給付中の認定日にも、仕事を紹介するそぶりひとつ見せてくれませんでしたから、煩わしいことはひとつもありません。
なお、私の知人は「え〜、こんなに給料もらってたの? これだけもらえる仕事、うちじゃないから自分で探してね」と言われたそうです。職安って、楽しいですね。
■8■ 支給の日
給付制限のある方は給付制限が終わってからの認定日、ない方は待機期間後の認定日の概ね10日以内に届け出た金融機関の口座に振り込まれます。よかったですね。
■9■ 魔の8月1日
基本手当日額は、毎年8月1日に前年度の労働統計平均給与額によって見直されます。この不景気の折り、平均給与額が上向くことは考えられません。筆者も、平成10年度の平均給与額が平成9年度のものより1%低下したことから、8月1日以降の支給額が1日あたり20円も下がりました。
■10■ 職安の対応
これから失業手当てを支給されたいという皆さん。職安の方は毎日失業者の対応に追われて大変に疲れているのです。
人間並みの扱いが受けられないなどと感じても胸の奥にしまっておいてください。あ、そこのあなた! どうかその握り拳をしまってください!! 我慢して認定さえ受ければ失業手当がもらえるのですから。
いかがでしたでしょうか。
もし、あなたが会社を辞めようと思われているなら、お役に立てれば幸いです。退職金と失業保険が、時間という贅沢を演出してくれます。失業ライフをエンジョイしましょう。
この特集を元に会社を辞めたら地獄のような生活が待っていたとしても、当協議会は一切、責任を負いません。