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耐乏PressJapan.

11月号 Nov.1999

発行部数 17325 冊

■特集:貧乏人、ダーツの旅へ(後編)■

平成の貧窮問答歌


■ 目次 ■


特集:貧乏人、ダーツの旅へ 茨城 to 姫路(後編)

10月号の特集、「貧乏人、ダーツの旅へ」の後編です。いよいよ、日本海〜姫路までの感動(!?)の旅路です。

前回のあらすじ

変人が集まって茶飲み話に花を咲かせていたとき、突如としてダーツの旅なんていう遊びがはじまってしまう。 貧乏なのに姫路などという一番遠い場所を指してしまった男は、1日目は石下〜草津、2日目に間違えて白馬乗鞍経由で乗鞍高原、3日目、上高地をタダで観光しつつ加佐の岬までたどり着いた。3日目の旅で思い切り疲れ果てた貧乏人は、翌日、日本海を見られることだけを考えながら眠りについた。

第4章:原子力発電所の歌

日の出とともに目が覚めた。できるならすぐに活動を開始したいけれど、軽自動車での車中泊では体を伸ばして寝られないから熟睡ができない。昨日の疲れもあるから、起きようという気が涌かない。もう少し、眠ることにする。

なんで茨城から姫路に行くのに日本海を経由したかというと、単に「どうせなら日本海も見たい」というどうでも良い理由からだった。 子供の頃、よく新潟県に海水浴へ出かけた。そのときの、日本海のきれいな印象が記憶の美化なのか、それとも本当にきれいだったのか、確かめたかった。ついでに、原子力発電所も見たかった。 茨城には、東海村という原発のメッカがあるけれど、あそこは林に覆われていて原発そのものをじっくり見ることが難しいのだ。自分は今、確実に日本海にいる。その安心感から、再びすぅっと眠りについた。

再び目覚めたのが10:00。良い天気だ。チョコレートをかじって朝食代わりにし、加佐の岬のトイレで用を足した。いよいよ、海に向かって歩き出す。 林の中の道を進んでいくと、なんだか忘れてしまったけれど石碑があり、しばらく進むとやがて岬に出た。眼前に、子供の頃の記憶通りにきれいな日本海が「まいったか!」と広がる。来て良かった。

加佐の岬周辺案内図。
加佐の岬のガイド
なんだったか忘れた
石碑

やっぱりきれいだ 海パンあれば泳げた
加佐の岬 小さな砂浜

そのまま、1時間ほど海を「も゛〜っ」と眺めていた。なんにも考えなかった。こういう時間の使い方をとても贅沢に感じたことだけを憶えている。肩の力がすぽんと抜けた、至福の1時間であった。

11:05、加佐の岬を後にして、加賀の町を走る。 ここら辺をどういうふうに走ったかは記録にも記憶にもないが、11:35に観光客相手の大漁市場という巨大な店を見つけ、中に入ってみる。 ひとり旅だし、まだ帰るわけでもないし、金もないので大量購入はできなかったが、350円でほっけを購入した。捨て看板によると、ここは99年4月24日にオープンしたらしい。 売場の他に買ったものをその場で焼けるバーベキュースペースがあり、「よろしかったら」なんて頻りに言われたけど断った。 買った魚はその場でさばいてくれるらしいけれど、ほっけはすでに開かれていた。この日、なぜか沖縄物産フェアをやっており、沖縄物産が色々並んでいた。「銀座わした」よりもひとまわり高かったので興味は涌かなかった。

さて、ほっけを買ったからには網で焼きたいが、網を持っていない。 偶然にジャスコを発見できたので、高いだろうと思ったけれど知らない土地でほかに安い店を探す気にもなれず、980円もする小さな焼き網を購入した。 「この網の元を取るためにも、これからも各地で焼けるものを買おう」などと考えたのだけれど、使用したのは結局このほっけを焼くときだけであった。人生なんて、そんなものだ。

13:42、燃料計が半分を切ったので安全策で給油。このとき、無敵のポンコツ軽自動車・セルボはリッター22kmという驚異的な燃費を記録。 寝るには狭いけれど、今回の旅を支えてくれた心強い相棒63年式セルボは、姫路からの帰り道に「どかん」とやってしまう羽目になる。 悔しいので、今回の特集では姫路までしかまとめないことにする。

道の駅・河野で休憩後、海沿いの道で屋根付きベンチのある駐車場をみつけた。 ここで、先ほどのほっけを焼いて、コーヒーとともに遅い昼食。大漁市場のおやじに「このほっけは海の塩味だけで食べられるよ。軽くあぶるだけで良いよ」なんて言われたので、もともと調味料を一切持ってこなかった僕にはもってこいの食材。 虫がいたので良く焼いて食べたけれど、確かにほのかな塩味がして旨かった。あっというまに食べ終わる。海を眺めながらほっけを喰う自分に少し酔った。

閑古鳥
大漁市場
虫がいた。
ほっけ

つぎの目的地は原子力発電所。 敦賀で「もんじゅ」の看板を見つけたのでそれを追って進んだが、わからないうちに立石漁港についてしまった。どうたら立石埼灯台というのがあるらしかったので、車を降りて歩く。細い道の左右に区切られた小さな家庭農園風の畑が続く。 お年寄りが畑の手入れをしているなかをずんずん進むと、灯台の説明書きに出会う。明治14年6月に2万2千6百円の巨額を投じて完成したらしい。灯台を示す矢印は、きつい上り坂を指していた。 灯台までの道のりは険しかった。車の運転でがたがたになっている体にはとるべきではない行動だったと今にしてみれば思う。やっとついた灯台は、木々に覆われていて海が見えないというすばらしい結果に終わり、体には疲労が追加された。

また車で走り出す。こんどは、美浜原発を目差した。目的のそれを見たのが16:40。爆風スランプの「スパる」を聴きながら原発を眺めるという野望を達成した僕は、そのまま美浜原発PRセンターに入った。原発についていろいろ知識を得られるはずであったのだが、17時閉館のPRセンターにはすでに蛍の光が流れており、ほんのさわりしか見られなかった。

海水浴場から見えます。
美浜原発
原発なんて、こんなもの。
PRセンター

18:31、「大飯町情報交差点ぽーたる」という変な名前の場所があったので休憩。近くに300円で入浴可能な温泉があるらしいという情報を得た僕は、一路、あみーシャン大飯を目差す。わかりづらく、ちょっと迷ってしまったので到着は19:00となった。300円で入浴でき、ロッカーは代金返却式という大変すばらしい場所であった。結構混んでいたので平泳ぎはできず。

入浴後、国道312号を姫路へと進む。ぽーたるで得た情報で、これを真っ直ぐ行けば姫路に入れること、途中にドライブインがあることを知ることができたので、気分は楽であった。 22:12、ついに「姫路 ○○km」という看板を見ることができた。脳の動きが活発になる。

途中、ちょっと迷ってTimesという関東圏では見たことのないコンビニで地図を立ち読み。給油しつつどどんと進み、23:12、本日の就寝地であるドライブインあさごやまに到着。立ち食いそば屋が営業していたので、400円で天ぷらそばを喰う。不覚にも、美味い。天ぷらも麺もいまいちだと思うのだけれど、関西圏のスープに初めて触れたショックからか、疲れていたからなのか、この旅で一番美味かった食い物を聞かれたら「ドライブインの立ち食いそば」と答えそうなくらいにおいしく感じてしまった。

ビールで兵庫県入りを乾杯し、23:57に就寝。姫路は、すぐ、そこにある。

本日の走行距離:423km
通算走行距離:1430km

1999.9.4の日記より

ぽーたるだって。
ぽーたる
わかりにくい。
あみーシャン大飯

第5章:終着の地、姫路城

6:00、姫路を射程距離にとらえたドライブインあさごやまでの起床。気分が良い。コンビニで買っておいたウィダーインゼリーで朝食。寒い。暖機運転でヒーターをかけ、フロントガラスの曇りを取る。6:37、姫路へ向けて出発。1時間も走らないうちに姫路市に入る。運転しながらガッツポーズ。7:45、はやる気持ちを抑えてローソン姫路京口店でおにぎりと神戸新聞を購入。腹ごしらえと、証拠の品を手に入れる。8:11、いよいよ姫路城の大手門駐車場に入る。料金は8:11〜13:01で800円であった。この出費は致し方ない。
また、そば喰いたい。
あさごやま

駐車場から歩く。門をくぐり、姫路城内へ入っていく。 公園になっていて、テレビの撮影班が2組いた。近所の人は、犬を散歩に連れてきていた。生活に溶け込んでいる場所なのだろうか。 城が生活に溶け込んでいるなんて、なんだかすごくいい。同じ城のある場所でも、石下の豊田城とは格が5桁くらい違う。

まだ城内には入れるまで時間があるので、まわりをプラプラ。芝生の上で寝ころんだりしたら気持ちよさそうだけれど、本格的に眠ってしまいそうなので我慢。ぷらぷらするうちに、9時になる。姫路城への入場は500円。

広い。昔の人はここに住んでいたわけだから、管理にどれだけ人の手が必要だったことだろう。贅沢とは、人の手をかけること。他人の時間と知恵を金で買うことこそ最高の贅沢だ。城主なんていったら、金持ちどころの騒ぎではないのだということが実感できた。ここに住める人間ってのは、すごいステータスである。

天守閣には記帳のノートがあったので、記帳した。直前の人が同じ茨城県の、しかも近隣の下妻市在住の人だったからちょっとがっかり。 考えてみれば、新幹線や飛行機を使えばあっという間の距離である。軽自動車で馬鹿みたいにやってきた人間にしてみれば遠い道のりであったから、できればこういうところでご近所さんの存在は感じたくなかった。

世界遺産。
姫路城に来ました
犬もベンチに腰掛ける
生活の一部、姫路城
天守閣からやっほー。
天守閣からの眺め
疲れてました。良い写真ありません。
姫路城

姫路城を観光したあとは、駅周辺をぶらぶら。なにか美味いものでも喰ってやろうと思ったけれど、日曜日なので変な店はみんな閉まっていた。

ぶらぶらぶらぶらして、お土産に兵庫の賃貸情報誌(ご自由にお持ちください)を貰ったり、スーパーをうろうろしたりしたけれど、ここら辺はファーストフード店とか本屋とか、どこにでもあるものしかなかったという印象。

1件、「うちは冷凍エビを使っているよ。素人料理だよ」と書いてある(実際にストレートに書いてあるわけじゃない)店があったので、生ビールもあるみたいだしそこで昼食。店前に書いてあったランチは日曜日はやっておらず、仕方なく1,800円のカモメC定食と生ビールで合計2,460円。なんとすばらしい出費であったが、注文して5分も経たないうちに料理が揃ってしまう。これで、箸をつけなくてもわかってしまった。

こんな感じで、なんだかべつに大したこともしないうちに目的地である姫路の観光は終わり、13:01、駐車場を後にする。もう、早く帰りたくってしかたがないのだ。 姫路までの走行距離は、推定で1,500kmくらい。初心者マークの僕にはかなりハードな走行距離だった。帰り道は、早く帰りたくて2日で石下まで戻ってしまった。根性無し。

1999.9.5の日記より

電車なら楽だったのにねぇ
姫路駅
金と気力があれば夜に呑んで旅館に泊まれるのにねぇ
飲屋街
味は…ひみつ。
かもめC定食

こうして、ダーツの旅は終わった。5万円弱の出費はその後の生活に多大な影響を与えたけれど、なんだか顔つきが変わったなんてまわりからいわれると、悪くない気がする。

でもやはり、馬鹿な遊びである。


貧評会

食パンを完食

僕が大学生だった頃。バイトをする時間があったら、勉強するべしと固く心に誓った。奨学金だけで生活したが、底がつくこともしばしば。ある寒い冬の夜。手元には100円しかなかった。食パンを買って一日一枚を規則としたが。。。。。欲望に勝てず一回で全部食べてしまった。後の後悔先に立たず、僕はさらに厳しい状況に陥った。

投稿:bin-bow


読者の声

「IP!」、たまたま今日見ました。HPの作り方が載ってるな〜と思って、立ち読みしていたところ、なにやら「貧乏」特集をしているではありませんか。

「あ、こんなことやってる人特集組めるほどいるんかいな?」って思ったら、なんと御本人登場!しかも、他にお仲間もたくさんいるんですね〜。ちょっと驚いてしまいました。

しかし、私も今ダーツの旅の計画を練っていますが、お金がかかる上に、時間もかかって「時は金なり」って言葉を痛感していたりします。

でも、私は実はブルジョアな旅の方が好きなので、それなりに楽しんでくるよ〜ん!

投稿:まる

身内からの投稿その1です。

「iP!」から掲載以来が来たのが8月号を発刊してまもなくでしたから、あのときは非常にびっくりしました。今度は、「あちゃら12月号」にも掲載されるらしいです。

まるさんは、いつの間にか出来てしまった「ダーツの旅愛好会」のメンバーです。全日本貧乏協議会が協力して「ダーツの旅」ウェブサイトを作成中ですので、旅の結果はそちらでご紹介できるはずです。

日経ネットナビ主催「ホームページ大王2000」、投票したよ。

でも、こういう企画で有名になって貧乏から脱出してしまうことの無いように十分気をつけてください。

投稿:こみ

身内からの投稿その2です。

投票、ありがとうございました。洒落だったのですけれど、ホームページ大王2000のページから飛んでこられる方も多かったので、何票くらい入ったか知りたいです。

精神的な貧乏はどんなに資産があっても続けられます。清貧という言葉には大変ひかれています。

なにかをクリエイトできる貧乏を目差したいですね。

身内からの投稿2連発でした。皆様も、お気軽にご投稿ください。


編集後記

■めっきり寒くなってまいりましたが、風邪などひいていませんか?■貧乏人は基礎体力が低下していますので風邪が長引きます。■編集者も2週間ほど咳と鼻水に悩まされて大変な思いをしました。■暖かくして1日中寝るのが一番の薬なのでしょうけれど、日々の生活を支えるための仕事がそれをさせてくれません。■風邪をひいてしまっても、せめて食事だけは摂れるように非常食のストックには気を使いましょう。(か)


次号のお知らせ

■特集:ハローワーク入門

発行日:12月中旬

耐乏PressJapan.は、皆様からの投稿が命です。投稿がないと、次号はいつ発刊できるかわかりません。投稿、お待ちしております。


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