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耐乏PressJapan.

10月号 Oct.1999

発行部数 19021 冊

■特集:貧乏人、ダーツの旅へ■

集りじゃない、物乞いだ。


■ 目次 ■


特集:貧乏人、ダーツの旅へ 茨城 to 姫路(前編)

茨城県石下町を中心に活動するアウトドア集団『森人倶楽部』。そのなかでも選りすぐりの変人5人が、ふとしたきっかけで「ダーツの旅」なる遊びをやることになってしまいました。

一番遠い場所を指さしてしまった男の貧乏旅行の様子をまとめてみました。

序章:貧乏人が旅に出るのは大変なのだ

いきなりで突然の唐突なことだった。これは事故だ。

思い起こせば7月の終わり。知人と茶飲み話をしているとき、最年長のおっさんがダーツの旅などということを言い出し、運の悪いことに姫路などというえらく遠い場所を指さしてしまい、よせばいいのに安比高原を指さした高校生が原動機付き自転車で実際に旅してきたものだから、良識のある大人である僕としても、旅に出なければならなくなった。

毎日のガソリン代にも窮している貧乏人のくせに、茨城県石下町から兵庫県姫路市までの長い道のりを軽自動車で行かねばならない。貧乏だから、高速道路などという文明は使用できない。死ぬかもしれない。

知り合いに「乗鞍の萱野さんにお土産を持っていってくれ」なんて言われたから、乗鞍も通らなければならない。死ぬかもしれない。

装備は、ランタン、バーナー、キャンプ用食器、寝袋、小さなクーラーボックス、Tシャツ数枚、半袖シャツ1枚、下着数セット、ジーパン1本、ジャンパー、バスタオル1枚、タオル数枚、撮影機材、ブラシ、ひげ剃り、虫よけ、かゆみ止め、などなど。これらを小さな軽自動車にどっかと積み、一路、姫路を目指すことにした。

死ぬかもしれない。

1999.8.31の日記より

第1章:貧乏人を拒絶する街、軽井沢

前日、壮行会と称してタダ酒を呑むことが出来た。いつもであるなら嬉しい目覚めを迎えるはずなのに、気分は重い。嗚呼、僕は今日、姫路に向かって走り出す。

8:56に家を出てから、買い物、給油を行いつつ、伊勢崎市内で迷いながらも、13時過ぎには碓氷峠に入っていた。13:40、碓氷峠の路肩に駐車、暑くなった車内をドア全快で冷やし、休憩。14時には、当初、第一日目の宿泊地に予定していた軽井沢に到着。

しかし、どうも軽井沢という街が好きになれない。1時間ほど車でうろうろと走ったのだが、駐車場はどこも有料であるし、カップルや幸せそうな家族しか歩いていない。15:00にマツヤ軽井沢店で食材を購入すると、さっさと出発することにした。僕(貧乏人)には無縁で不似合いな場所、それが軽井沢。

冷却中
碓氷峠で冷却中

のどかな山間部の道を走り、草津方面へ。草津なら、乗鞍へ行くのも都合がよいし、温泉もある。この日、草津で寝ることに決め、車を走らせた。このとき、重大な勘違いをしていることに、まだ気づいていない。

途中、T字路を草津と逆に行くと、半出来温泉というおかしな名前の温泉があるとわかったので行ってみる。半出来温泉の駐車場に車を止め、吠え続ける犬っころに怯えつつ玄関へ。しかし、明かりもついていないし誰もいない。しばらく考えたが、声をかける勇気がわかない。僕は小市民だ。

隠し畑…
崖を登るとそこには畑

半出来温泉は黙って出てきてしまい、草津温泉へ。ぐるぐると車を走らせた後、やっと入浴だけ出来るという看板を見つけ、17:33に「草津温泉館」に入る。温泉にはいるだけで800円もするし、店員は愛想がないし、ロッカーは100円とるし、あまりよい思いはしなかったが温泉はやはり草津だけあって気持ちがよい。夕方で客も少なかったので、隙を見て平泳ぎもできた。

無事入浴を終え、18:23「道の駅・草津温泉」に到着。軽井沢で購入した食材でサンドイッチを作り、夕飯とする。今日は、ここで眠ることにした。予想以上の寒さに、念のために持ってきたジャンパーを着込む。うとうとと眠りに入ったのだが、1時間ほどでのどの渇きに目が覚め、それからはなかなか眠れなかった。22時頃から、雨が降っては止むという天候になって、なんだか切なかった。

走行距離:286km

1999.9.1の日記より

草津温泉館
草津温泉館 800円

第2章:牛に「轢」かれて善光寺参り

6:04、車のなかに鈍く射し込んでくる日の光で目が覚める。本格的な寒さの朝。

トイレを済ませ、ガラスのくもりがとれるのを待ってから出発したのが6:30。国道292号を北西方向に進み、長野入りを目指す。乗鞍に行くには、長野市を通るのが良さそうだと判断したのだが、このとき、まだ大きな勘違いに気がつけずにいた。

草津スキー場を過ぎたあたりから、朝食にはもってこいの景色と駐車スペースが続いているが、「有毒ガス発生場所・駐車禁止」の看板がいたるところに設置してある。少し前の僕ならば大したことはないと駐車しただろうけれど、中州キャンパーの一件以来、警告には従うことにしている。恥ずかしいもの。

看板のない、ベンチの設置された展望の良い場所を見つけたので、コーヒーと昨日の夜と同じ食材で作ったサンドイッチの朝食。調味料やらバターやらは一切持っていない。ハムの塩味だけのサンドイッチとインスタントコーヒーなのだが、自然のなかで食べると心は旨く感じるらしい。

再び車で走り出すと、次第に体が甘いモノを欲しだす。貧乏人のくせに、僕の軟弱な体は朝食の内容に不満だったようだ。

志賀高原を過ぎ、上林温泉のセブンイレブンで袋入りのインスタントラーメン、コーラ、チョコレートを購入。コーラが体にしみ入る。コーラ自体、日々の生活でも滅多に飲めるものではないから、よけいに感動。

ちょっぴり硫黄臭い
コーヒーいれて、
調味料ゼロ
サンドイッチを喰う

8:10に「道の駅・北信州やまのうち」でトイレ休憩を済ませると、一気に長野市へ向かった。善光寺の看板を見つけ、「ここが善光寺か」などと呟きながら国道406号「鬼無里街道」を進む。国道とは思えない、狭い山道である。10分ほど進んだところで、やはり善光寺くらいは観ていきたいと考えて引き返し、9:42に善光寺駐車場に到着。1時間300円もするので、さっさとまわってこなければならない。

善光寺は空いていた。何組かの団体客と、少しのカップルや夫婦が観光客をしていた。

『牛にひかれて善光寺参り』というと「あ〜」と思い出す人も多いだろうけれど、牛なんて一匹もいなかったので轢かれる心配はなさそうだ。…ひかれる違いか。

善光寺で一番、印象に残ったモノは『夜間参拝者用お守り自動販売機』。これで一気に興ざめしてしまった僕は、500円も払わなければ見られない善光寺内部なぞ無視。駐車場代と引き返してきたガソリン代のことを悔やみつつ、再び鬼無里街道で白馬を目指した。

匂うぞぉ(失礼)
仁王像…だっけか
御利益はあるのか!?
お守り自販機(夜用)

しばらく走ると、鬼無里村歴史民俗資料館と、わりと大きめの駐車場があったのでトイレ休憩。資料館は300円も取られることがわかったので立ち寄らず。

また走り出すと、水が緑色に輝く川が見えるようになった。緑色の川を眺めながら河原でインスタントラーメンを半分だけ作る。

このラーメン、久しぶりの塩っけとなり涙が出た。インスタントコーヒーもおいしい。安上がりに感動を味わえる貧乏人の素晴らしさかな。

具は一切ナシ
味噌ラーメン(ハーフ)
グリーンリバー
怪しいほど緑。

鬼無里街道も終わり、白馬。国道148号をひたすら北上する。13:03、ローソン小谷店で煙草とバドワイザーを購入。温泉を探して一杯やろうという試み。なんだか気持ちがおっきくなっている。ここから右に入り、山を登っていくと温泉があると確認し、13:30、奉納温泉に到着。また、やっているかどうかわからない凄いところに来てしまった。今度は、ビールが呑みたい一心で声をかける。おばちゃんが出てきて、温泉にはいることができた。閑散期の温泉宿なんて、こんなものなのかと悟る。入浴400円。シャンプーは無かったので自前を使用。誰もいなかったので平泳ぎ2往復達成。塩味がする温泉だった。

あとは、乗鞍高原にあるビラージュという店を探し、萱野さんにお土産を手渡せば今日の予定は終了となる。国道に戻り、再び北上。まだ、とんでもない勘違いに気づいていない。

15:00、トンネルをくぐると、新潟県の糸魚川に出てしまう。明らかに行き過ぎだと感じたので知人に電話。テレホンカードの度数が見る見る減って行く。ここで、やっと勘違いに気が付く。目的地は安曇村の乗鞍高原。私が目指していたのは白馬の乗鞍だったのだ。急いで引き返す。

途中で給油しながら、糸魚川>松本市>乗鞍高原を3時間で走る。景色もへったくれもありゃしない。

18:00、乗鞍高原のビラージュに到着するが、店は定休日で誰もいない。向かいにあるおいしいと評判のラーメン屋も定休日。途方に暮れ、コーヒーを涌かしてチョコレートをかじっていたら、18:30にビラージュの萱野さんが帰ってきた。初対面なので会話がかみ合わないものの、知人からの電話が入り、話はトントン拍子に進んで泊めていただけることに。知人への土産に檜のベンチを無理矢理に持たされてしまい、軽自動車が傾いた。「これから、姫路まで行くんですけど…」「あ〜、だいじょぶだいじょぶ。」

食べきれないほどの食事でもてなされ、お風呂に入り、ログハウスの木の温もりを体に感じながら22:14に就寝。ハードな一日だった。

1999.9.2の日記より

ビラージュは定休日だった。
ビラージュ(CLOSE)

第3章:乗鞍高原の小さなお店は檜の香りに包まれていた

5:30、良い気分で静かな目覚めを迎えた。少し眠いけれど、ベッドでの快眠が嬉しかった。

朝、萱野さんが乗鞍岳まで連れていってくれた。高度が上がるにつれ、木が低くなり、シラカバはダケカンバに代わり、やがてハイマツとナナカマドだけになり、最後には木が無くなる。カーブを過ぎるごとに、微妙な生態系の違いがある。さすが、日本一高いところにある舗装路。

頂上付近、岐阜県側の駐車場で停車し、販売機のコーヒーをご馳走になる。カン類は販売して折らず、紙パック。トイレは有料で、100円。萱野さんが一緒に払ってくださった。

雲海というものを初めて見た。すぐそこから雲が沸き立つのも初めて見た。八ヶ岳も見えた。とにかく、絶景という言葉はこういう事なんだという風景に出会えた。初めて。初めて。
すげ〜、すぐそこから雲が! クールな中年
沸き立つ雲 萱野さん

すごいっす。墨絵の世界。
乗鞍岳からの眺め
糞尿を下界に運ぶのも大変なのさ
トイレ有料(100Yen)

頂上から戻ると、朝食が用意されていた。ちゃんとした朝食が摂れるなんて幸せ。

今日は、上高地の売店に檜のコースターを納品するらしい。ついでに、萱野さんのお弟子さんである高橋さんに上高地を案内してもらえることになる。

コースター作りは、まず高橋さんが荒削りし、次に萱野さんがつるつるに磨いて「上高地」の焼き印を入れる。こうして、檜のコースターが完成するのだが、もう、店の外も中も檜の香りでいっぱい。すがすがしい。

さて、上高地というのはマイカー規制がかかっており、観光バス、タクシーの他は、許可された自動車しか入ることが許されない。ビラージュの自動車は、ちゃんと許可証が貼ってあり、タダで上高地入り。駐車場も、納品車は無料。

上高地の風景もすばらしい。流れる川はとても澄んでおり、飲めるんじゃないかと錯覚しちゃうくらいだけれど、残念ながら大腸菌がいっぱいとのこと。あそこでビールなんか呑んだら最高に気持ちいいだろうし、高度も高いので最高に酔っぱらうだろう。

ここでCM。乗鞍高原にある小さなお店、ひのきやビラージュ。レクリエーションセンターのそば。今、一押しの商品は僕も持たされてしまった檜のベンチ。サイズによって値段は異なるけれど、7,500円より。自動車での持ち運びも実証済み。

弟子と師匠。
コースター作り
かんせい〜
コースター(\300)
上高地と私。
河童橋です

上高地から戻ると、もうお昼。ここで、念願のおいしいラーメンをご馳走してもらえることに。

ビラージュの向かいにある「ラーメン藤」。普通盛りでも十分に量がある。モヤシが大量に乗っており、もう大満足の量。ここのラーメンは量だけではなく、味もすばらしい。おそらく、乗鞍という気候にあった味なのだろう。さっぱりしているけれどこくがあって、食べた後の満足感もちょうど良い。お薦め。

これで普通盛り
醤油ラーメン(\500)

ラーメンを食べると、もう13:30になっていた。ビラージュに別れを告げ、再び出発。安房トンネルは有料なので、もちろん安房峠を越える。富山入りを目指すために国道471号に入り、14:45、奥飛騨温泉郷の上宝・道の駅で休憩。ここは、非常に汚かった。一気に富山に、と考えていたが、道の駅で白川郷のことを思いだし、途中、国道41号を古川の方に進んでいく。ひたすら走り、日が暮れる間近に白川郷へ到着する。しかし、なんだかとても観光地化しており、なんだか止まる気が起きない。もちろん、駐車場は有料。合掌造りの土産物屋、料理屋を見てしまうと、なんだかがっかりする気分が大きくなってしまい、クアハウス白川郷で風呂にはいると、そのまま富山へ向かってしまった。クアハウス白川郷、入浴400円、ロッカー100円。作り物チックな露天風呂で、脱衣所には洗面台が無かった。風呂上がりののどの渇きに耐えきれず、120円でなっちゃんを購入。

給油を済ませ、富山へ向かう。途中、いくつか合掌造りの集落があったけれど、もう暗かったので無視してずんずん進む。もう、疲労困憊で思考能力が低下している。それに、関東道路地図しか持っていないので、地図のエリア外に入ってしまい、情報不足からのイライラというか、不安というか、そんなものが頭にあってなんだか気分が乗らない。

富山市に入ったのが20時台。20:40にローソン高岡笹川店でおにぎり2個、十六茶の500ミリペットボトル、それにアーリータイムズのポケット瓶を購入し、夕食。

そのあと、どう走ったかは地図がないのでわからないが、空港の駐車場に迷い込んだりしながら、海の見える道を探し続けた。どうしても、今日中に日本海を見たかった。頭のなかは混乱し、なにがどうなのかまるでわからない。こんな状態で走り続ければ事故を起こしかねないと思う気持ちもあったが、その意見を採用するだけの冷静さは完全に失われていた。

どこかのローソンで、店員作成の店近辺のMAPを見たときに、「海」が載っていた。じっと見て、なんども頭のなかで反復した。「うみ」。

あとは一目散に海の方向を目指した。細い道に入り、お墓の横を過ぎると、やがて「加佐の岬」というのがあった。22:50のことだった。駐車場に車を入れ、自分は海に来たのだから、もう、ここで休むのだと頭に言い聞かせた。

コンビニの袋からアーリーを取り出し、ラッパでぐっと呑んだ。これで、もう今日は走ることはできない。少し、雨が降っているようだったが、よくは憶えていない。

走行距離:3日間合計1007km

1999.9.3の日記より

不確定名:やつれた姿
もう、駄目っす。

後編は、次号に掲載します。お楽しみに。


貧困の食卓

ャガイモのお焼き
投稿:P
安売りで、ジャガイモを大量に買ってきても、火が通るまでに、時間がかかるので、ガス代がもったいない。

でも、ジャガイモをすり下ろして、小麦粉を少し混ぜてからフライパンで焼くと、短い時間で火が通る。

これならガス代も浮くし、ご飯が無くても空腹を満たせます。

なだれ丼
投稿:あなご
白いご飯に涙を流せるあなたに、さらにおいしくご飯を食べる方法をお教えします。

うなぎの「たれ」だけ買い求め、あたためてからご飯にかけて食す。

うなだれながら食べる、「うなだれ丼」のできあがりです。


編集後記

■『耐乏PressJapan.』が雑誌で紹介されました。株式会社晋遊舎様の「iP!」という新創刊の雑誌で、「Iラブ貧乏」というコーナーに掲載されています。■寒くなってきましたね。財布は年中寒いし、なにもかも寒い季節になります。朝、布団から出るのも辛いです。10月号発刊が送れた原因もこれだったりして!?■私の最近のマイブームは小麦粉。水の量、フライパンでの伸ばし具合で食感が大きく変わります。ソース、ケチャップ、マヨネーズ、醤油、ゆとりがあればバターなど、これらを組み合わせることでバリエーションも生まれ、なかなか楽しめます。(か)


次号のお知らせ

■特集:貧乏人、ダーツの旅へ(後編)

発行日:未定

耐乏PressJapan.は、皆様からの投稿が命です。投稿がないと、次号はいつ発刊できるかわかりません。投稿、お待ちしております。


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