では早速、秘伝のタレを構成する基本材料をご紹介します。
はい、以上で終わりです。

まあ、昔は高級品だったとはいえ、本当にありきたりの調味料ですね。どんなに貧乏でも、いや、貧乏だからこそ醤油は絶対に欠かせない調味料ですし、酒と砂糖は、買うと高い本みりんの代わり
*1に重宝しますから、やはり常に台所へと鎮座させておきたい調味料です。米のありがたみをより一層と深めるためには、この三つはなければ辛いのです。
とはいえ、こんな材料で本当に旨味が得られるのかと訝しがるかもしれませんけれど、基本なんていうのはこんなものです。なんだって、育たなければ力は得られません。赤ん坊には泣くことしかできないのと一緒なのです。
そんなわけで、秘伝として育てるための簡単な儀式を執り行うといたしましょう。
手始めに、酒を鍋に注ぎます。とりあえず三合くらい使いましょうか。ちなみに、これは日本酒や焼酎、泡盛など、煮物に使われるような酒ならばなんでも大丈夫です。焼酎・泡盛はちょっと臭みが残りますけれど、それはそれで独自の風味となります。酒として呑むときの旨さは関係ありませんから、安い酒で大丈夫。こいつを、強火で煮立ててしまいます。
鍋は、とりあえず小さな雪平鍋があればそれをお使い下さい。なければなんでもかまいませんけれど、フライパンのような空気との接触面の大きな道具ですと蒸発が早いので適していません。なにか、鍋の変わりになるようなものを見つけてください。

それともうひとつ、酒だけを沸騰させた経験のない方にはあらかじめ申しておきますけれど、これ、簡単に火がつきます。大きめの寸胴に泡盛を五合ほど注いで火にかけた際には、一メートルの火柱があがったのを今でも覚えております。天ぷら油のようにいつまでも燃え続けたりはしませんけれど、炎であることに変わりはありません。作業中は、決して火の前から離れないでください。
鍋から炎が上がったら火を弱め、炎が消えるまでアルコールをとばしてください。そうしましたら、砂糖と醤油を加えます。砂糖は、とりあえず大さじ三杯、醤油は、煮詰まった酒と同量を加えましょう。砂糖と醤油を加えた後は、焦げないように、弱火でじっくりと火を通してください。

ちょっと味見をしてみて、アルコールを感じなくなっていれば土台は完成です。子供や酒に弱い方がいらっしゃる家庭で使われる場合は、アルコールをきっちりとばしてください。ここで手を抜くと、小さな子供だと救急車を呼ぶ羽目になってしまいます。
こんな注意書きもばからしいと感じるのですが、今の世の中、どんな馬鹿がいるかわかりませんから気を抜けません。
とにかくこれで、秘伝のタレへと育てるべき土台は完成しました。
さっそく、今夜の炊事の際にでも育ててみましょう。