
厠という言葉、子供や都会の人間には通じないかも知れないが、川の上に掛けて作った、または、家の側の屋という、つまりはトイレのことを指した言葉であった。
江戸の長屋では共同トイレだったし、田舎の農家であっても、トイレは家の外にあるものであった。臭い、というのもあろうが、かつては有益な肥料として売れるものであったから、野良仕事中でもすぐに入れる野外トイレが用いられたのだろう。僕が幼い頃、友人宅のトイレがそれで、夜は怖いものだった。
水洗が主流となった今では、お尻も洗ってくれるし、便座に腰掛けると、脱臭まで試みてくれる。まるで、便器に「お前の尻は臭い」と言われているようで、ちょっと、腹が立つ。
そんな僕の住まう家は、未だ、汲み取り式のいわゆるぼっとん便所である。