おぞよもん暮らし
 お芋さんはうちにとって、欠かすことができない。保存がきいて、ほかすところもなく、お腹のもちもよい。人々の飢えをしのぐ際、必ず出てくるというのもうなずける。さて、このお芋さんだが、つるの部分もかなりおいしく、わたしの好物のひとつだ。

 お芋さんのつるは沢山あってよいのだが、食べられるようにするには手間がかかる。つるには薄皮があり、これを取らないと、食べたときに繊維が口の中に残ってしまう。そこで一本いっぽん、親指と人差指の爪の先を使って、薄皮をむいていく。頭からしっぽまで半分むいだら、今度はしっぽから頭に向かって残りの半分をむく。すぅーっと最後まできれいにむけると気持ちがいい。

 これはかなりの時間がかかる。指先は黒くなり、つるから出る汁でヤニがついたようになる。2時間もしていると指がふやけてきて、正直、あぁしんどと思うこともある。しかし休日、おざぶに座りこみ、ラジオを聴きながら、新聞紙の上にたんまりあるつるを前に、単調な作業をしていると、日常のわずらしいことを忘れ、頭の中が空っぽになる。そうでなくてもおまえの頭の中は空っぽやろと言われるとちょびっと悲しいが、わたしかていろいろあるんですわ。そして、終いに何であんな小さいことで悩んどったんやろとなり、あとはこの原稿の筋まで難なく思いつくから楽しい。

 薄暗くなった頃、たんまりあったつるがなくなり、代わりに薄皮の向けたつるがざるの中に入っている。わたしはこれをだし汁と少し濃いめのおしたじで炊いたんが好きだ。あれだけ手間ひまかけても炊いてしまえは鍋ひとつ分になってしまう。炊いたんに鰹節を多めにふりかけて、熱いごはんの上にのせて食べる。鍋に残ったおだしは雑炊にして全部いただく。お芋さんのつるでこんなに幸せになれるわたしは、始末にできていることに苦笑しつつも、これでよかったと満足するのだ。

 田舎からお芋さんと三段の干し網が届いたので、芋するめを作った。芋するめとは干し芋のこと。干した芋は糖分が凝縮されるのか甘く、水分がぬけて固うなり、あごの運動にもなってよろしい。

干し網のある暮らし  お芋さんは十個ぐらいを一気に使う。皮をむいて蒸したら、細長く切って網に干すだけ。後は日あたりと風通しのよいところに置いておけばよい。この時期であれば、窓を開けていても思い切り寒いこともなく、また、空気もだいぶ乾燥してきているので室内干しで充分だ。わたしはカーテンレールにS字フックをひっかけ、そこに網をぶらさげている。だいたい一週間から二週間くらいで干し上がる。

 さて、この芋するめ、そのまま食べてもおいしいが、わたしはあぶって食べるのが好きだ。子どもの頃、母親がよくおやつとして出してくれた。うちに帰ると、お芋さんの焦げるこうばしい匂いがしており、一気にほっこりしたのを覚えている。
 また、お湯でふやかして小さく切り、お粥さんと一緒に炊いてもおいしい。その際はお葱も入れることをおすすめする。お芋さんとお葱はなぜかよく合う。わたしは芋するめにせずにそのまま取ってある芋のほうも、お葱と一緒に雑炊にすることが多い。

書斎に芋するめ  小さい電熱で芋するめをあぶり、焼酎のお湯割りをちびちびしながら、ラジオ深夜便を聴く。こうばしく、どことなく懐かしい匂いが部屋に広がる。そして、原稿を書いたり、読書をしたり…。秋は日も短うなって何となくさみしくなりがちだが、こうしていると秋の夜長は楽しい。そうこうしているうちに底冷えの冬が来る。電熱の赤いニクロム線に手をかざしつつ、芋するめをかじっていれば、冬もまた楽しくなりそうだ。

筆者紹介:今井うさ
1979年生まれ。衣笠山のふもとで過ごした学生時代から、始末の精神と清貧生活にめざめる。
現在も京都のかたすみで、下駄をつっかけ、自転車をのりまわしながら、つつましく生息中。

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今井うさ おぞよもん暮らし 耐乏PressJapan.
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