第一回
はじめに
平成一七年一〇月二二日
風呂なしの物件に住んでいた頃、週3回は銭湯に行っていました。常連のおばあさんとは互いの台所事情を話す仲。大根葉や芋のつるでごはんを食べていると言った私に、「うちのおぞよもんでも持っていき」と言うてくれはったことがあります。これが、私とおぞよもん、そして、京おんなの始末の精神にふれるきっかけでした。
何度かいただいたのはおからや、お野菜の炊いたんです。
おぞよとは、安価で量もわりとぎょうさんある、あまり気のはらないおかずをさします。
たとえばおから、納豆、豆腐などの大豆もん、ひじきやあらめ、安い葉っぱもんや小魚等を使います。こういったものを差し出されるとき、「おくちよごしでかんにん(←お口を汚すようなものでごめんね)」と言われたのを覚えています。
近頃は惣菜一般をおばんざいといいます。しかし昔はおばんざいと言うと、おぞよより材料がよく、一品もんとして成り立つものを指したようです。私も作ったおかずを一応、おばんざいと言いますが、卓袱台にあがるものは大抵「おぞよもん」。ただ、ちょっときばっておばんざいにすることもあります。ハレの日とケの日のように、区別することが生活のメリハリになるんです。
どちらにしても、始末の精神が生きています。お金はかけない。でも、ちょっとの手間と時間はおしまない。そして、どんなもんでも、しっぽまでとことん使い切り、最後までおいしくいただく。これは食べ物だけでなく、他の物でも同じです。
つつましく始末しながら暮らしていく中で感じる、私にとっての心のぬくもり。もし、この連載を読んでくれはる方が少しでもぬくくなってもらえたら、しあわせです。
筆者紹介:今井うさ
1979年生まれ。衣笠山のふもとで過ごした学生時代から、始末の精神と清貧生活にめざめる。
現在も京都のかたすみで、下駄をつっかけ、自転車をのりまわしながら、つつましく生息中。
過去のおぞよもん
第一回
はじめに
第二回
はねもん。
第三回
お芋さんのつる。
第四回
芋するめ。
第五回
ひきだし。
第六回
底冷えと暮らす。
第七回
想いのある部屋。
第八回
うち旅。
第九回
初めての袴。
第一〇回
心のポケット。
第一一回
水回りの話。トイレ編。
第一二回
水まわりの話。お風呂編。
第一三回
水まわりの話。洗濯編。
第一四回
『料る。』
第一五回
「カゴの中身と幸せの種」
第一六回
食い意地。
第一七回
「品」のある人。
第一八回
ご飯と生きる。
第一九回
海辺の特等席
今井うさ おぞよもん暮らし 耐乏PressJapan.
発行:全日本貧乏協議会
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