貧乏大全 第二巻
貧乏大辞典第二版
全日本貧乏協議会
な行

 
な【菜】
喰える草のこと。
なあ
同意を促す言葉。奢ってくれる人に対しては「はい」、奢ってくないひとにたいしては「はあ?」と返す。
ない【無い】
知らないもののこと。貧乏人にとって、松阪牛もフォアグラも、この世には存在しないに等しい。
ないかく【内閣】
いかなる場合も最良の選択を回避するという重責を負わされた組織。
ないしょく【内職】
我が家が貧乏であることを子供にそれとなくわからせるために、主婦などが行う賃仕事。
ないそではふれぬ【無い袖は振れぬ】
逆立ちしたって、国民年金なんて払えないし、支払うために間違って借金なんかしたりすると、老後以前に今を心配する羽目になる。国民健康保険だって同様。あ、住民税はちょっと待ってて。ごめんなさい。
ナイロン
絹に似て非なる、石灰などを原料とした化学合成繊維。
ナウ
流行の最先端の後方。「銀座−」「−なヤングにばかうけ」
ながし【流し】
貧乏なギタリストが技能向上と日々の糧を求めてさまよう営業活動であるが、最低でもレパートリーが千曲は必要という時点で去る者も多いことだろう。
なかずとばず【鳴かず飛ばず】
筆者の写真家活動のように、世間の耳目にふれるような活動ができないこと。
なかまはずれ【仲間外れ】
携帯電話を持っていないとかの、些細なこと。
なけなし
お金持ちからしてみれば無いのに等しいような、貧乏人の財布に納められた金銭。ハイヤーも呼べないし、インペリアルルームでの食事なんて到底できない。三パック八十八円のまずい納豆と、三パック九十八円のそこそこ美味しい納豆を目の前にして、それこそ真剣に悩まなければならないほどわずかな金銭。
ナショナルミニマム
国家が保証すべき、国民の最低限度の生活水準。つまり、国民健康保険に加入していなければ、その出費が恐ろしくて虫歯の治療すらできないなんて戯れ言は、最低限度ではないということで、よっぽどの過疎地でない限り歯医者なんていくらでもあるから、お金さえあれば虫歯の治療が受けられるだけでも幸せなのだ、日本。虫垂炎にかかっても、借金して手術を受ければ死ぬことはないんだ、日本。
なべ【鍋】
煮る、茹でる、蒸す、炊く、場合によっては焼くことも可能な万能調理器具で、貧乏人にとって無くてはならないもの。
なまにく【生肉】
塩漬けにされていない肉。
なや【納屋】
十分に住めるのに、荷物置き場にされてしまう不遇な部屋。ここに納められる荷物の大部分は、無くなってしまっても生活には一切の支障を生じさせない。
なやみ【悩み】
悟りを開くまでの苦悩のことだが、一般には答えを出すための過程におけるパーツ不足による行き詰まり感のことを指している。
なりきん【成金】
主な症状としては、急にお金持ちに成り上がることで、過去のひもじい生活をすっかり忘れてしまい、現在にひもじい生活を送っている者にたいして唾をかけて歩くという、健忘症の一種。拝金以外に自分の存在を確認する術が無く、金がなくなってしまうと何もできないという特徴がある。
なんこうだき【楠公炊き】
米を煎り、釜の湯の中にパッとほりこんで炊いたもの。およそ三倍から五倍にふくれあがる。
[an error occurred while processing this directive]

 

にいまくら【新枕】
サンキに枕カバーを買いに行ったら、二九九円で枕が買えてしまった日の夜。
にく【肉】
鳥・豚・牛の順に、入手が困難になる。食が偏りがちな貧乏人は、これを喰っているその場でエネルギーの満ちてくるのが実感できる。
にくこっぷん【肉骨粉】
手遅れと開き直った貧乏人に牛肉を与えてくれたと同時に、豚肉や鶏肉を縁遠いものにしてくれた原因とされている、飼料兼肥料。
にくしょく【肉食】
鳥獣の肉が食べられる状況にあること。
にくはく【肉薄】
肉を薄く切って使用すること。
にくばなれ【肉離れ】
肉が食べられない状態が続くこと。
にごうさんじゃく【二合三勺】
一人当たりの米の配給量で、約三三〇グラム。
ニコチン
知的好奇心という大海原を、明るく照らしてくれるアルカロイド。多少の毒性なんて気にしてはいけない。
にこよん
終戦後、職業安定所からもらう日給が二四〇円であったことから生まれた俗語で、日雇い労働者のこと。杉山鉱山では、アパッチ族と見分けがつかなかった。
にせもの【偽物】
ゴミ。
にてひなるもの【似て非なるもの】
似非、つまりは偽物。ビニル、プラスチックなどで作られたものが多い。大量生産・大量消費・大量廃棄の世の中が生み出した、二十世紀の汚点。貧乏くさいもののほとんどが、これに当てはまる。プラグマティズムの申し子。「コンビニの商品なんて、全部−だ」
にもつ【荷物】
「男にとって、女なんてのは人生最大の−だ。これは、なにも俺がもてないから言うのではないぞ、決してな」 …… 会長、ある日の出来事より

物質としてのゴミのこと。

にる【煮る】
沸かしたお湯や熱した出汁などに野菜、ごく希に肉を入れて加熱する調理方法。特に肉を調理する場合、他の調理方法と違って旨味や栄養をスープ内にとどめておくことができるため、貧乏人にとって鍋は必須である。
にんたいりょく【忍耐力】
米を喰うことで得られる、肉体を支える精神、もしくは精神を支える肉体の、気にくわない現実を受け止める力。離婚や退職は、これの限界によると言われている。
[an error occurred while processing this directive]

 

ぬか【糠】
玄米などを精白する際に分離した果皮で、筍の灰汁抜きなどに用いる。無人精米所などで無料入手可能であるが、虫の巣になっていることが多いので注意が必要である。
ぬかす【吐かす】
当辞典の編集方針のひとつ。
ぬかにくぎ【糠に釘】
貧乏人に対するセールストーク。
ぬかばたらき【糠働き】
サービス残業。
ぬきかえす【抜き返す】
貧乏という海底を蹴りつけ、一気に浮上すること。「今は貧乏という潜伏期間だけれど、いつかきっと−・してやるんだ、たぶん」
ぬく【抜く】
食べ(られ)ない。「今日は気分的に飯−・きで過ごしているだけであって、決して財政難で−・いているわけではないのだ」
ぬぐ【脱ぐ】
貧乏生活で、体の贅肉をすっかり落としてしまうこと。
ぬくみ【温み】
かつてこの中に熱燗の日本酒が入っていたのだなあと感じさせる、ほろ酔いの嬉しさと飲み干してしまった虚しさを伴うような、空になった徳利のほのかな暖かさ。
ぬけがら【抜け殻】
蝉のものなどは、唐揚げみたいで美味しそうだと思うことがある。そんなときは、空腹で魂の抜け殻になったような状態のことが多い。
ぬけられます【抜けられます】
長屋路地。
ぬすっとたけだけしい【盗人猛々しい】
日本企業、特にテレビジョン等のスポンサー本位なマスメディアに携わる人間の基本姿勢。
ぬすむ【盗む】
師匠から学ぶための唯一の方法。「うちの師匠、技術を−・もうにも写真なんか撮らないし」
[an error occurred while processing this directive]

 

ねいじつ【寧日】
何事もなく、家でのんびりと米を喰うことのできる日。
ねおき【寝起き】
人生の中で、もっとも最悪な時間帯。寝る前までのテンションがリセットされてしまったような倦怠感は、まさに最悪。小鳥のさえずりを聞きながら、窓から射し込む朝日によって自然に目覚めることができたなら、最良の時間帯になるかもしれない可能性を秘めてもいるけれど、大抵、日の出と共に眠りにつくような生活をしているので実現は難しい。
ねがえばかなう【願えば叶う】
願い事は、周囲に漏らしておくことで、実現が近寄ってくる。
ねがふぃるむ【ネガフィルム】
ネガティブなくせに、案外と心が広い反面、ちょっとだらしない。
ねこなでごえ【猫なで声】
奢ってくれそうな人が隣にいるときに、つい出てしまう声。
ねたましい【妬ましい】
他人が努力して得たもの、他人の生まれ持った才能、他人が得た幸運を知ったときに抱く感情のうち、表に出すと支障を来すもの。「隣で味音痴が旨そうなもん喰ってるのを見ると、ーやら腹が立つやら」
ねつい【熱意】
見返りの大きさを期待した先行投資。
ねつぞう【捏造】
権威主義に対抗する為に始まり、それによって得られた自己の権威を守るために続け、いずれは破局を迎えることになる、でっちあげ。
ねまわし【根回し】
張り巡らせた人脈を活用することであり、鉢植えには真似の出来ない芸当である。
ねる【寝る】
最も手軽に行える現実逃避であるが、現実が夢の中にまではみ出してくる場合もある。
ねんがじょう【年賀状】
「貧乏だから」の一言で出さずに済む程度の世間体だが、数年に一度ほど、生存証明として活用している者もある。
ねんこうじょれつ【年功序列】
バブル崩壊と共に崩れ去った、地位の上下を年齢や勤続年数でつける仕組み。現在では新たな査定制度が導入され、査定の内容に応じて地位の上下をつけているが、査定で重要視されているのは勤続年数における上司への気に入られ方の度合いである。
ねんし【年始】
今年こそはと気合いを入れながら前年と同じ事を繰り返す、一年の始まり。
ねんまつ【年末】
正月の餅の心配が始まる頃から大晦日までのこと。
[an error occurred while processing this directive]

 

ノイズ
おまえもいつまでもそんなことしてないでちゃんと定職についてちゃんと働けよなどといった定職に就くことがそんなにちゃんとした行為なら国民のために公僕となる公務員なんてのはさぞかし立派なんだろうけれどそれにしてはあんなことやこんなことが公務員によって行われているという点についてはどうなのだろうかという疑問を抱かせる、思い出の中でしか生きられない種の人間が発する人の言葉に似た音。私にとやかく言う前に自分がちゃんとしているという根拠はどこから来るのか不思議である場合がほとんどであるのは、ちゃんとしている根拠のある人間はこんなことを言わないからである。
のうえん【濃艶】
霜降り牛肉の、鮮やかな赤と白が織りなす艶やかな魅力。
のうぜい【納税】
日本国民の義務。納税額を算出するためには申告が必要であるが、国民には申告の義務があるという法は見たことがない。申告についての郵便を誤ってゴミ箱に捨ててしまうと、音沙汰が無くなる。
のじゅく【野宿】
旅先での宿泊手段の一つで、野外で出費無しに泊まること。季節によって、防寒や防虫などに費用がかかる場合もある。キャンプサイトにテントを張って寝泊まりすることを野宿とは言いたくない。
ノストラダムス
言葉遊びの第一人者。
ノッキング
ガソリンエンジン内での燃料の異常爆発。「車を運転していたら急に−しだして、この車ももうダメかと思ったらただのガス欠だった」
のばなし【野放し】
家畜を放し飼いにすることであるが、最近は人間の子供も家畜化しつつあるようだ。
のびる【野蒜】
ユリ科の多年草で、味噌との相性がよい。大量に食べると、飽きる。
のみたおす【呑み倒す】
酒場で知り合いを捜すことから始まる。
のむ【呑む】
人類の友たる酒と向かい合って人生について考えたりしようと思ってもこの友達ったらぐいぐいと僕の心を掴んで離さないからいっつも呂律が回らなくなってとにかく幸せなひととき。
のんだくれ【呑んだくれ】
大酒を呑み過ぎて気がつくとどん底におり、吉野屋で「ビールはまだかぁ!!」と叫んだりする、相手をするよりは自分がそうなった方が遙かに楽な状態。
ノンフィクション
フィクションのひとつ。
のんべえ【飲兵衛】
会えば必ず呑んでいるという、憧れの職。
[an error occurred while processing this directive]

[an error occurred while processing this directive]