貧乏大全 第二巻
貧乏大辞典第二版
全日本貧乏協議会
あ行

 
あい【愛】
けっ。
あいいれない【相容れない】
つくる側の人間と消費する側の人間との間に隔たる、虫が好かないといった感情。
あいえんか【愛煙家】
煙草の煙により、頭の働きを促進できる人間。マールボロも、ゴールデンバットも、重税になるとおなじだけ値上がりすることから、貧乏人でも高額納税者になり得る。
あいご【愛護】
動物を保護しようとする試みだが、保護すべき動物の選出は感情論を主体に行われる。
あいさつ【挨拶】
「今日はまだ何も食べてないんですよ」
あいそ【哀訴】
同情という、人間特有の感情を刺激することで一宿一飯を得たり、ものをもらったり、値切ったりといった利益を引き出すこと。貧乏という響きから他人が勝手に連想するステレオタイプな同情を利用する行為一般を言う。
アイデンティティー
独自性に対しての自覚。「朝はコンビニ、昼はファーストフード、夜もコンビニ。そんな生活のどこに日本人としての−が保てるというのだね」
あいべや【相部屋】
宿という閉ざされた空間などよりも、外の世界を見て回ることに目的をおく旅人がとる、旅費を安く済ませるための一夜の同棲行為。
あいもーど【iモード】
おじさん達は使い方を知らず、ガキどもは使い道を知らない。
アイロニー
反語。「私は色々な人に『良い性格してるね』と言われるのであるが」
あいわ【哀話】
あかちょうちんで隣人から一杯おごらせるために、多少の誇張を含んで構成された日々の生活談。
あか【赤】
マルクスもレーニンも読んでいるようだが、はたしてエンゲルスを読んでいるかとなると怪しい。
あかじこくさい【赤字国債】
国の運営予算を税収でまかなえなくしてしまった無能な為政者が、債務を負うことでその場しのぎをする際に発行する公債の一種。予想よりも給料が安かったためにサラ金で都合をつける国民と同様に感じられるのは、国家を運営する為政者が国民の代表者であるためである。
あかがみ【赤紙】
税金を五年ほど滞納すると家中に貼られるという噂がある。
あかふだ【赤札】
スーパーなどの小売店が閉店間際に行う、貧乏人に対しての慈善事業。冷蔵庫の無かった時代に比べれば、下げ幅は小さくなった。
あかじ【赤字】
連立方程式も確率も微分積分も十分にこなせるエリート達が、引き算を忘れてしまった結果。
あかしんぶん【赤新聞】
日本の主要新聞社が競って発刊している新聞の総称。
アクリル
暖かく、乾きやすく、安く、発電まで行えるという夢の素材。これで作られた服を着て得られる発電効果は、残念ながら、着ている本人を虐待するか、手品のタネとして利用する以外の使い道は確立されていない。
あげる
人から申し入れのあった場合、これほど甘美な言葉は「奢ってやる」と双璧を成し、こちらから申し出る場合はゴミの処分を意味する。
あげる【揚げる】
油っこい物を食べたいときに威力を発揮する調理方法。天ぷらの衣作りや素材の下ごしらえなど、細かい点は多々あるけれど、油の温度管理さえしっかりしていればなにをやっても旨い物になる。揚げ鍋は、鉄製の分厚い物が好ましいが、コーヒー豆の空き缶でも問題なく揚げることができるので、空き缶を喫茶店で貰い、一.五リットル一三八円の特売サラダ油を手に入れればすぐに揚げ物ができるようになる。注意すべき点は、水分の多い素材を加熱した油に入れると爆発することと、火にかけたまま長時間放置すると火災になるという点であるが、馬鹿は貧乏できないという法則からすれば、老婆心であろう。溶き卵に砂糖とパン粉を加えて練った物を揚げただけで、油分と糖分を補給できる菓子になるというのは本当に喜ばしいことだ。
アジテーション
お金持ちの持つ優越感に対し直に訴えることにより、そのお金持ちの財布のひもを自分の意図するかたちでゆるめること。アジる。
あそび【遊び】
遊という学問。かけた費用を回収できないものは、これに当てはまらない。発見なき遊びは、時間の浪費でしかない。
あたまきん【頭金】
人間らしい生活を放棄する、悪魔の契約の始まり。
あびきょうかん【阿鼻叫喚】
ローン返済者の日常。
あぶくぜに【泡銭】
バブル経済によるフローの部分。赤字国債でも返済しておけばよかったと、後悔しても遅い。まさに泡ははじけて消えた。
アルバイト
語源はドイツ語の arbeit から来たが、語源を辿ればギリシア語の orfanos 、ラテン語の orbus に行き着く。どちらも孤児の意味である。

「Arbeit macht frei.(労働が自由を作る)」 …… アウシュビッツ収容所に掲げられた格言より

アレルギー
プラスチック製品やビニル製品など、似て非なるものに対して貧乏人が起こす拒否反応。
あんしん【安心】
生きていけるという自信と、それを裏付ける米のあること。
あんらくし【安楽死】
患者の希望によって医師が与えることは許されていないが、死刑判決を受けた受刑者は国から賜ることが出来る。体への苦痛はないと言われているが、本当に苦しくないかどうかの証言は得られていない。
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いいひと【いい人】
必要かと言われると、そうではない人。「どうでも−」「いなくても−」
いいふらす【言い触らす】
「私、貧乏なんです」と周囲にもれなく伝えておくと、良いことが多い。それによって、離れていく人間、馬鹿にする人間は、なにもくれないから不要である。
いえ【家】
多くの人々が私的で自由な空間であると認識している、生活のための住まい。賃貸物件での一人暮らしならばそれも可能であろうが、家族を伴う場合、家すらも社会であり、個人の自由は家族の総意に押しつぶされる運命にある。
いかもの【如何物】
エノケ
いきざま【生き様】
日本語には、死に様しかない。
いきじごく【生き地獄】
ゆとり返済のローンにてマンションを購入した人間の、十年後にむかえることになるであろう生活の俗称。
いきる【生きる】
食物の摂取と排泄、睡眠により、最低限の生が保たれる。生きているという実感は、極度の空腹時に味わうことになる。これを味わうことなく、自分の時間の多くを会社勤めで消費し、その代償である賃金を餌に浪費して生きる人間は、不幸であると言える。生きているという実感は、生きたいという実感でもあり、より強烈な生を営むための起爆剤といえるからだ。
いける【生ける】
根菜のヘタを水に浸けて葉を育てること。
いしだばいがん【石田梅岩】
(1685-1744)倹約・節約の神様として、節約家ならば誰しも知っているはずの人物。
いちおくそうびんぼうじだい【一億総貧乏時代】
安保自動継続、ベトナム戦争終戦などによりイデオロギーの絶えた八〇年代から始まるカタログ文化、マニュアル文化などの流れにバブル経済崩壊という爆弾が加わることによって生まれた、考えることを放棄した人々が貧乏へ転がり落ちるという社会の流れ。これに巻き込まれる前に、自ら貧乏に降りていく者こそが、真の貧乏人である。
いちじょう【一畳】
かつては千円の頃もあったというが、現在では三千円が上限とされている。それ以上、高い貸家に住んではいけない。体格により若干異なるが、座って半畳、寝て一畳。立ったら三十平方センチメートルと考えられる。
いちまんえんさつ【一万円札】
家賃を支払う際、数時間だけ財布の中に存在する高額紙幣。十万円硬貨なんて、見たことがない。
いねかり【稲刈り】
稲穂の実った稲を収穫することで、体のすべての機能を酷使する作業。鋸刃の鎌を用い、左手で稲を握り右手に握った鎌で一気に引き切る。このとき、稲を握る手は親指が上、小指が下になるように順手で握ること。小指なら、万が一に失ったとしても、親指を失うよりは不便しないからである。また、鎌は稲を一気に切るのに必要な力以上に握ってはいけない。無駄に力を込めて握ると、足を取られたときにカマを離すことができず、手首から先をごっそりと失う羽目になるのだ。手首を切ったくらいではなかなか死なないが、手首を切り落とせば、人は簡単に死んでしまう。四〜五株をひと束にし、四束ほどをハの字になるように交互に重ねたら、五〜六本の藁で束ねる。
いふく【衣服】
衣食住のうち、食の次に考えるべき項目。寒さに耐え、警察のお世話にならずに済むものである必要がある。年齢別に検証した場合、一般には、二十代でシャネル、三十代でイトーヨーカ堂、四十代でサンキとなるが、貧乏人は、二十代でもサンキを選択しなければならない。
いやし【癒し】
「癒されたいんだったら、ちゃんと傷ついてから来いってんだ」 …… 鯖吉老人
いんえいらいさん【陰翳礼讃】
蛍光灯を購入する費用が無く、裸電球で暮らしていることを正当化するために唱える、一種の呪文。
インスタントしょくひん【インスタント食品】
法的に認められた麻薬。頼りすぎると、個人経済に大きな支障を来す。
インパク
インターネット博覧会の略。アクセスするも、旧式の端末では処理が間に合わず、古いパソコンを一掃して経済を動かそうとするIT革命の一端を確実に担っていると言える。
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うえとさむさ【飢えと寒さ】
貧乏人が、常に立ち向かうもの。
うおうさおう【右往左往】
役場に行くと、そのあまりの不案内の為にこの状態に陥る。
うげつものがたり【雨月物語】
一七六八年に上田秋成(1734-1809)が書いた、貧乏教本。
うさばらし【憂さ晴らし】
北京亭でラーメン三百五十円+玉子チャーハン三百五十円をやけぐいする行為。または、ブックオフで百円の本を十冊ほど購入して散財する行為のこと。
うそ【嘘】
満腹でも、「飯はくったのか」と聞かれたら「まだです」。
うたげ【宴】
自分のアパートを会場とし、安い材料に手間という無料の調味料を加えて、ぼったくる行為。必ず主催者となり、自分の会費はごまかす。酒は極力、持ち込ませること。
うっとり
欲しい物や明らかに旨いとわかる喰い物を目の前にしたときの、愛でるような気持が全面に溢れた精神状態と表情。
うぬぼれる【自惚れる】
自分を客観的に見る能力が不足し、実力以上の存在だと思いこむこと。たまには自惚れでもしないと、こんな辞典をひとりでちまちまと編纂する気力は維持できない。
うまい【旨い】
奢ってもらった際に連発すべき言葉のひとつだが、本来は塩辛のおいしさのこと。
うらちょうぼ【裏帳簿】
懐にしまうための金の詳細で、脱税の決定的証拠として押収される運命にあるもの。
うらない【占い】
おもてもない。
うらやましい【羨ましい】
他人が努力して得たもの、他人の生まれ持った才能、他人が得た幸運を知ったときに抱く感情のうち、表に出しても差し支えのないもの。「隣で旨そうなもん喰ってる奴を見ると、−・くて腹が減る」
うわさ【噂】
その場にいない者に関する真相の曖昧な物語で、その真相不確かな内容によっていちばん利益を得られる者が発信源であることが多い。
うわめづかい【上目遣い】
あと一歩で奢ってもらえそうなときに用いる、相手の財布に対して服従する用意のあることを示す態度。
うんでいのさ【雲泥の差】
途方もないくらいに大きな差があることであるが、泥が大地と水を指しているとすれば、泥がなければ雲も存在しないのである。
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えいえん【永遠】
別れにのみ存在する。
えいきをやしなう【英気を養う】
能力を十分に発揮できるようにと自分に言い訳をして布団に入ること。
えいようか【栄養価】
腹一杯に喰えるようになってから考慮すべきこと。
エクタクローム
表記されている感度と、実効感度のギャップに悩まされること。好きだけれど、なかなか買えない。本気モードの証。フィルム装填に失敗すると、真っ黒なフィルムが切られもせずに、フィルムケースに入れられて返却される。もちろん、現像代は徴収される。なぜならば、ちゃんと現像された結果が真っ黒いフィルムの帯だからである。
エコー
愛煙家が車の運転などのときに用いる、フィルター付きの煙草。
エコノミー
飛行機の座席に関する、ファースト、ビジネス、貨物に次ぐ四番目のランク。
えさ【餌】
コンビニ弁当やファーストフードなどを指す。主にグルタミン酸ソーダや人工甘味料を多用した、似て非なる食べ物。
えせ【似非】
若干、なんとなく似てはいるけれど、所詮はその場しのぎのゴミでしかないもの。似て非なるもの。なんとか風、なんとか的。なんとかくさい。
エリート
用意された問題を解く方法を教育によってたたき込まれた成果を遺憾なく発揮し、東京大学で四年間ほど隔離された人間。試験という受け身のスペシャリストである彼らに、自分から問題提起をするという発想は存在しない。
えんぎ【縁起】
かついだところで、なんになるのさ。
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オーエス【OS】
かつてはパソコンをめざましく発展させ、今では限界の要因にまで落ちぶれた箱の中の時代遅れ。
おおぶろしき【大風呂敷】
能力を誇張して訴える際に広げることで知られ馬鹿にされがちだが、広げようにもある程度の努力が必要な大きな四角い布。
おうよう【応用】
基本の組み合わせ。
おかね【お金】
人は、水を飲まなければ死ぬが、溺れ死ぬこともある。
おかねがない【お金がない】
世間一般では、「遊ぶお金が足りない」の略。我々貧乏人にとっては、辞書を引くまでもなく、そのままの意味の状態。
おかゆ【お粥】
米一合に対し水六〇〇ccを入れた鍋をストーブの上に一時間かけたもの。少量の米でも腹を満たすことができる。
おくびょうもの【臆病者】
貧乏する勇気がなく、現在の生活を維持するために借金を背負う人間のこと。
おけら【螻蛄】
ケラの俗称。もしくは、知人縁者に対し、物乞いしなければならない状態。
おごり【奢り】
万病、とくに空腹に効くとされる行為。うけるに限る。己の人脈を計るバロメータ。
おごる【奢る】
無い袖は振れない。貧乏人たるもの、余計な見栄は張らないほうがよい。
おもいで【思い出】
これのなかには、未来を探すことはできない。
おゆわり【お湯割り】
トリスやレッド、または安い焼酎を呑みやすくする、冬に嬉しい酒の呑み方。砂糖を加熱してカラメルにし、そこにトリスとお湯を注いで呑むなんていう素敵な呑み方は、勿体なくて教えられない。
おんな【女】
酒なしでも宴会可能な種族。
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